梅枝から時蔵へ! 六月歌舞伎座・襲名披露でさらなる高みへ!
襲名で演じる『妹背山婦女庭訓 三笠山御殿』のお三輪。健気で気丈な雰囲気がぴったり!「今回、いじめの官女に打たれて悶絶する場面で、久しぶりに独吟を入れさせてもらうことになりました」。独吟とは黒御簾音楽の手法のひとつで、俳優の憂いのある演技に合わせて、唄方一人、三味線方二人で演奏すること。「最近は、あまりやらないやり方なので、観たことがない人も多いと思います。ぜひ型の違いを楽しんでいただければと思います」。
■豪華ないじめの官女は小川家総出演で
部長 襲名披露狂言の『妹背山婦女庭訓』(いもせやまおんなていきん)の「三笠山御殿」で、お三輪を勤められますね。もう何度もやっていらっしゃるイメージですが、初役なんですね。 時蔵 そうですね。父も祖父もお三輪で襲名をいたしましたので、それで僕自身も襲名できるのは、ある意味、運命だと思います。またここまでお三輪をやっていなかったというのも、そういう縁なのかなと思います。 部長 『妹背山婦女庭訓』は大化の改新を軸にした、壮大なバックグラウンドを持つ物語ですけれど、その中の「三笠山御殿」は、身分違いの恋をした酒屋の娘・お三輪の悲恋がテーマです。情熱的に恋に突っ走るお三輪ちゃん、楽しみです! 時蔵 町娘のお三輪は求女(もとめ)という男を好きになって、大きなお屋敷にまで追いかけていきます。それって相当勇気が必要で、肝が据わっているということだと思うので、そこは表現できるといいですね。そして一番大事なのが、いかにしてお三輪が「疑着の相」にたどりつくかです。 小僧 ぎちゃくのそう? 時蔵 嫉妬に狂った形相のことです。求女が本懐を遂げるには、疑着の相を持った女の生き血が必要で、そのためにお三輪は殺されてしまうんですね。だからどのようにして疑着の相になったかが重要で、そのプロセスでお客さまを納得させられないと意味がない。そのためにもいじめの官女がすごく大事なんです。 部長 お屋敷に乗り込んできたお三輪をいじめる官女たちですね。 時蔵 そうです。いじめの官女がちゃんといじめてくれないと、お三輪は疑着の相にたどりつけないんですね。そういう意味で、今回は安心しています。とくにいじめの官女を演じる後輩たちは、みんな僕のことをあんまり好きじゃないと思うので(笑)。いつもあらゆるダメ出しをしているので嫌われていると思うから、しっかりいじめてくれると思います(笑)。 部長 いや、梅枝さんの小言なら、後輩たちは喜んで聞くと思いますよ。それにしてもいじめの官女、超豪華なメンバーですね。歌六さん、又五郎さん、錦之助さん、獅童さん、歌昇さん、萬太郎さん、種之助さん、隼人さん!