タキシフォリンの抗酸化作用/医療ジャーナリスト・安達純子
「新薬登場で重要度が増す~認知症の早期発見と予防」<20> 認知症予防では、水溶性ビタミンの葉酸や、青魚の油(不飽和脂肪酸)のDHAのサプリを食べると認知機能の改善が見られたと報告されている。2024年7月には、健康食品成分のタキシフォリンの摂取が、軽度認知障害(MCI)と軽度認知症の進行予防と関連していることが新たに明らかにされた。タキシフォリンは、シベリアカラマツなどの針葉樹に存在する有機化合物(フラボノイド)で、強い抗酸化作用を持つ。 「タキシフォリンは、抗糖化作用(糖によるタンパク質の変性を防ぐ作用)が最も強いのです。認知症のモデルマウスに約半年投与したところ、水迷路試験で良好な結果を得ました。患者さんへの臨床試験で、摂取する前と比べて摂取した期間には、認知機能が下がらないことがわかったのです」とは、国立循環器病研究センター脳神経内科の猪原匡史部長。東和薬品との共同研究で認知症に対するタキシフォリンの研究を行い、さらに認知症の予防法の開発を進めるため、2024年4月、国立循環器病研究センターに認知症先制医療開発部を設置した。 「酸化では活性酸素によって細胞や組織が傷つき、糖化では糖がくっつくことで細胞が変性します。それらは、生活習慣病や動脈硬化と関係が深いのですが、認知症も助長します。タキシフォリンは、強い抗酸化作用と抗糖化作用で、MCIから認知症への移行を防ぐ可能性があります。今後、さらに証明したいと思っています」と猪原部長は話す。