米国経済の「ゴルディロックス」は維持可能か? マクロ経済シナリオの変調に警戒するマルチ・アセット戦略
イーストスプリング・インベストメンツ(シンガポール)のマルチアセット・ポートフォリオ・ソリューションズ部門のポートフォリオ・マネジャーであるNupur Gupta氏は2024年4月に「まだ先が読めない米国経済の行方」と題したレポートを発表した。米FRBが直近で最初の利上げをしてから約2年間が経過したものの、米国のGDP成長率にはほとんど影響がみられず、24年3月の政策決定会合では米FOMCメンバーが2024年の米経済成長率を2.1%と予想し、23年12月の事前予想である1.4%を大きく上回った。Gupta氏は、「(マルチアセット・ポートフォリオでは)米国経済の力強い成長データを受けて、リスク性資産には強気だが、その一方で、より保守的でインカム志向のポートフォリオでは国債に大きな配分を置いている」とする。そして、「リスク性資産をオーバーウエイトしているポートフォリオであっても、オプション戦略を活用することで十分なダウンサイド・プロテクションが得られる」と、先行きの米景気変調にも備えているとしている。
2022年3月に米FRBが最初の0.25%の利上げによってゼロ金利政策を解除して以来、米国は約2年間が経過し、「金融環境は大幅に引き締まり、資本コストは約10倍に上昇した」。金融政策の波及経路の法則に従えば、米国経済は利上げによって減速し、米国経済は2024年に景気後退するというのが、大方のエコノミスト等が予測していたメインシナリオだった。ところが、実体経済は、「米経済のサービス部門のデータが軟調の兆しを見せ始めた矢先、製造業は底を打ち、再加速しているような状況」だ。Gupta氏はレポートで、累計で5.25%の金利上昇(利上げ幅)にもかかわらず、米国の家計と企業が比較的平然としている様子に対し、「金利と成長率の関係は切れたのか? もはや利上げは実体経済に影響を及ぼさないのか?」と問いかけている。