釣り糸放置、ハト受難 絡まる被害後絶たず ボランティア「マナー守って」 兵庫・明石の大蔵海岸
明石市の大蔵海岸公園で、釣り人が残した釣り糸がハトの足に絡まる被害が後を絶たない。指や足を失うケースも多く、痛ましい姿に気付いた市民が、ボランティアで糸を取り除いたり、釣り糸を拾ったりする活動を続けている。釣り人のマナー向上が求められるが、特効薬はなく、市も対策に頭を悩ませている。(森 信弘) 【写真】釣り糸が絡まったハトの足 明石海峡大橋を望む同公園。駐車場を備え、最寄り駅からも近い。休日ともなると、家族連れを含む釣り人らでにぎわう人気のスポットだ。 明石市東仲ノ町の中川俊史さん(63)は4月下旬ごろ、公園内の芝生や松林で足に釣り糸が絡まったハトを見つけた。糸が食い込むと、指が壊死(えし)して欠ける。周辺で指や足首から先が欠損したハトが数多くいたため、海岸の清掃活動を始めることにした。7月からは月1回程度、交流サイト(SNS)で仲間を呼びかけて取り組んでいる。 中には、釣り針が鼻に引っかかり、糸が背中を通って足に絡まっているケースも。中川さんはこうしたハトを救助するため、市の許可を得た上で、餌をやっておびき寄せて糸をほどく活動もしている。これまでに延べ約70羽を助けた。 同じハトを複数回助けたこともあるといい、中川さんは「いくら助けても、被害がなくならない。市民の憩いの場なのに見るのがつらい」と対策の必要性を訴える。 ■ 市は以前から、海岸でごみを持ち帰るよう呼びかけ、ごみ袋も置いてきたが、中川さんらの訴えを受け、注意喚起を強化。ハトに釣り糸が絡まったイラストを添えたラミネート加工の表示板を取り付けた。 また、釣り人が残した餌を目がけてハトが集まり、落ちている釣り糸に絡まる可能性があるため、残した餌を海へ流すデッキブラシの設置も検討する。 ただ、市海岸治水課の宮本哲也課長は「餌だけでなく、釣った魚をその場に置いて帰る人もいる。個人のマナーの問題で、行政にできることは限られる」とする。公園管理事務所の警備員も巡回しているが、釣り糸は見えにくいという難しさもある。 ハトの被害について、公園内の松林でウオーキングをしていた男性は「10年くらい前からあったと思う」と話す。釣りが趣味の神戸市垂水区の男性(79)は「ベテランよりも、慣れていない家族連れなどの方がマナーが悪い」と指摘。男性は大蔵海岸や、同区の「アジュール舞子」で、釣り糸が絡まったハトを助けたことがあるという。 大阪市から釣りに来ていた30代の男性は「自分の周りのごみはなるべく取るようにしている。釣り禁止の場所は増えているので、マナーを守らなければ」と話していた。 大蔵海岸の一部区域は、11月初旬にアジュール舞子の地中で空洞が見つかった影響で、立ち入りが規制されている。 ■全国でも問題、粘り強く啓発 日本鳥類保護連盟(東京)によると、釣り糸の被害は全国で起きており、「カモメやカワウのくちばしや羽に絡まるなど、海沿いでの被害が多い」という。 日本釣振興会(東京)は、釣具店などとマナー啓発や清掃活動に取り組む。「マナーを守る人が増えればほかの人に広がる。少しでも被害が減らせるよう呼びかけたい」と同会事務局。交流サイト(SNS)上でも、こうした呼びかけをする動きが出ている。 神奈川県横須賀市のうみかぜ公園前の護岸でも2021年ごろ、釣り人が残した釣り糸がハトの足に絡まる被害が動物愛護団体や市民の指摘で問題になった。 同市の港湾管理課によると、小さな子どもがけがをする可能性もあるため、ごみを拾う頻度を増やし、啓発ポスターを張るなどしてきた。今も被害はなくならないが、担当者は「釣りに来る人のSNSで話題になっているという効果はある。釣り糸をわざと捨てる人はわずかだと思うので、少しずつ減らせれば」としている。