日本動産鑑定がシンポジウム、「企業価値担保権」に期待寄せる
4月19日、(特定)日本動産鑑定(TSR企業コード:297425994)が主催する「第10回 賛助会員の集い」が都内で開催された。金融機関や官公庁、士業関係者など約200名が参加。「企業価値担保権」に関わる各省庁の担当者や企業の代表者が講演した。 ◇ ◇ ◇ 冒頭、久保田清理事長が登壇し、「企業価値担保権」について語った。要旨は以下の通り。 ABL(動産担保融資)から始まった不動産や保証人に頼らない融資は、企業の定量情報だけに依らず、定性情報を踏まえて事業価値を適切に評価する「事業性評価」の普及に向けた長年の取り組みもあって、「事業成長担保権」を改め2024年3月、法制化に向け「企業価値担保権」の名称で国会に提出された。今後、「企業価値担保権」の法制化が進めば、①不動産などの担保を持たないスタートアップの資金調達、②経営者保証の解除による事業承継の円滑化、③事業全体を把握することによるM&A時の企業価値の高まりなど、実務上で活用が期待できるケースが増える。 一方で、「企業価値担保権」活用のためには貸し手(金融機関)だけでなく、借り手(事業者)側の制度に対する理解を深めることも重要だ。関係者の尽力に対する感謝と、事業性評価による本業支援の拡大に向けたより一層の協力を要請したい。
ABLによる経営者保証に依存しない融資
「企業価値担保権」にも通じるABLの現状と取り組みの方向性については、経済産業省の松村光泰課長補佐(経済産業政策局・産業資金課)が講演した。 まず、企業の保有する資産のうち、300兆円を超える規模となる在庫・売掛債権が、これまでは担保として活用されてこなかったことに言及。ABLの推進により、不動産などの担保を持たない企業にも資金調達の機会が増える利点に触れた。 官民で進めてきたABL推進に向けた取り組みの具体例としては、①これまで債権を担保とする資金調達の障害になっていた債権譲渡禁止特約をはじめとする債権法の改正、②経産省が推進する非財務情報の分析手段としての「ローカルベンチマーク」、③責任の重さが指摘されてきた経営者保証の解除などを挙げ、事業者が資金を調達するうえで支障になってきた問題の改善が進んできたことにも言及した。 また、経営者保証を取り巻く最新の状況では、経営者保証改革プログラムに基づき、2024年4月よりABL融資に対する信用保証制度において経営者保証の徴求が廃止される旨も説明。経営者保証に依存しない融資慣行の確立に向けた制度の整備が進みつつあることを示した。