日本動産鑑定がシンポジウム、「企業価値担保権」に期待寄せる
多分野で活用される事業性評価
事業性評価の活用では、水産庁の玉城哲平陸上養殖専門官(増殖推進部栽培養殖課)が「養殖業成長産業化の推進」をテーマに講演し、2020年7月に策定された「養殖業成長産業化総合戦略」に基づき、マーケットイン型への転換を目指す養殖業では事業性評価の活用が進んでおり、陸上養殖や内水面養殖における事業性評価ガイドラインも公表されていること、マーケットイン型養殖業等実証事業において、事業性評価を活用した事業者向けの補助が進んでいることを説明した。 一般企業からは(株)Linkhola(TSR企業コード:133646238)の野村恭子社長が、信頼できるボランタリークレジットの創出のためには事業性評価による持続可能性を含めた経済性が重要であることを説明した。 事業承継センター(株)(TSR企業コード:298894319)の金子一徳社長は、事業承継の際には財産や権利といった目に見える資産のほか、顧客基盤や技術力などの知的財産を適切に評価する必要があることを説明した。
―ABLから事業性評価、「企業価値担保権」法制化までの道のりについて
会の終了後、久保田理事長が東京商工リサーチの独占インタビューに応じた。 2005年に経産省から「動産譲渡担保の登記制度」が発表されたことで、不動産や保証人に頼らずとも、『経営実態を映し出す鏡』である無形資産や技術力の把握により将来性がある企業への支援が可能になることに気付いた。しかし、当時のABLの主流は大企業向けのファイナンスで、融資支援より手数料収入に重点が置かれていた。ABLはソリューションの考え方であり、不動産や保証人の乏しい中小企業にこそABLによる支援をと訴えたが通じなかった。だが、そこから2024年まで、コツコツと中小企業支援の為のABLの普及を実施してきた。「企業価値担保権」の法制化に向けた動きにより、ようやく中小企業支援が具体的に進むこととなる。 中小企業は日本の宝であるにもかかわらず、今までは技術はあるのに担保がないため、成長が拒まれてきた。「企業価値担保権」が成立すれば、企業の稼ぐ力を金融機関が見抜き、有形資産の乏しい中小企業の資金調達手段を多様化させることができる。忌まわしいバブル崩壊時にこの仕組みが活用できていたらとの思いが、今でも胸を打つ。 法案が法制化すれば、日本の金融にとって、大きく新たな羽ばたきの一歩となるだろう。