日本動産鑑定がシンポジウム、「企業価値担保権」に期待寄せる
―事業性評価や「企業価値担保権」の普及に向け、金融機関に期待することは
人材の育成に限る。バブル崩壊後、金融機関は収益重視の守りの経営となった。業務の中心が一般融資から保険や投資信託の販売になり、銀行員に対する研修の大半がFPに向かうようになった。この結果、法人に対する支援は疎かとなり、法人渉外のノウハウは低下の一歩をたどってきた。金融機関の醍醐味である企業支援のウエイトが減ると、希望を持って入行した新入社員も早期に退職してしまう。若き行員・職員に、取引企業の成長を共に歩むという金融機関の楽しさをわかってもらうことが重要だ。 また、取引先からの期待に応えるという、本来の金融機関の役割の追求も必要だ。コストカットのための支店の統廃合や窓口業務の簡素化、渉外活動の人員減少ばかりを進めるのではなく、相談できる体制の見直しが必要だろう。 金融機関の原点は「目利き力」だ。鑑定士並みの目利き力を期待するのではないが、事業や商品を見る目を養う研修や実践を取り入れていくことで、企業と共に歩むことを思い出し、取引先の主治医となっていただきたい。
―事業性評価や「企業価値担保権」を活用する上で、借り手側に必要なことは
「企業価値担保権」を適切に活用するためには、事業者自身にも動産・売掛債権の担保、知的財産、無形資産、技術力を含めた包括担保の意味を理解していただくことは重要だ。 今後は借り手側である事業者に対する勉強会も強化していかなければならない。 (東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2024年5月9日号掲載「WeeklyTopics」を再編集)