「警察の中に山やクマの習性に詳しい者がいない」「後方に陣取るだけ」…猟友会のハンターが明かす、「クマ被害は人災」と言えるワケ
現場を知らない警察官が気の毒
そのようなことが常態化しているので、出動要請が来ても気分良く行けなくなるのです。ライフルを持てるのは10年以上の経験者ですし、そもそもクマ撃ちの経験者が少ない。一部の年寄りを除いて、みな他の仕事を持っています。要請を受けてすぐに動けるような会員は一握りです。 戦力になる若い会員ほど、仕事の現場の最前線で働いているわけですから、すぐに応じることはできません。いつ来るか分からない要請に臨機応変に対応することなど、そもそもできないのです。 5月の鹿角市大湯での警察官2名が負傷した事件で、私は警察官が怪我をしてから連絡が来たので現場に行きました。その時に現場に来た警察は、遺体のある場所すら把握していませんでした。広い山の中で肝心の場所が分からなければ、何もできません。 撃つ気満々で行ったのですが、実際には何もできず、「危険なので下がってください」と言われ、箱罠を仕掛けただけでした。警察官はあまりに現場を知らず、その対応はチグハグすぎると思います。 被害を受けた警察官は本当に気の毒でした。彼らは業務として捜索活動をしました。もし、その場所に詳しい警察官がほかにいて、現場周辺の状況を事前に把握さえしていれば、あのような怪我はしなくて済んだかもしれない。
マニュアルが一切通用しない
タケノコの生えている笹藪は、そのままクマの巣になります。タケノコの時期になると、同じ場所でひたすら食べ続けるのです。藪が深いとライフルを持っていても取り回しがきかない。馬鹿正直に真っ直ぐに藪漕ぎしていくのではなく、クマがいるであろう場所まで安全を確保しながら迂回して移動する必要があります。 山は生きているのです。季節によって植生も変わるし、山岳地図などほとんど役に立たない。クマが倒した獲物は、それがたとえ人間であっても必ず執着する。必ず近くに身を潜めていることを前提に行動すべきなのです。 安全な場所にいる上官の命令やマニュアルに従っているばかりでは、現場は危険で仕方がありません。自然相手に型通りのマニュアルなど、通用するわけがないのです。 命令を受けて捜索をする警察官は、本当に大変だと思います。山に関しては全くの素人ですから、山の歩き方も分からない。二次被害を避けるためということで、危険を犯さないことには共感します。勝手に山に入ってクマにやられた者を、どうして命をかけて救助しなければならないのかという思いもあるはずです。 でも、今回被害にあった警察官は、あまりに無防備でした。興奮したクマにクマスプレーなどほとんど意味をなしません。クマの習性をまるで理解していなかったことに原因があるのです。 せめて、山に詳しい第一発見者を頼ってその声に耳を傾けるか、猟友会の会員を呼ぶべきでした。 でも誰のことも責められない。しっかりとした対策を講じる時が来たのだということなのだと思います。
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