「警察の中に山やクマの習性に詳しい者がいない」「後方に陣取るだけ」…猟友会のハンターが明かす、「クマ被害は人災」と言えるワケ
なぜ有害獣駆除の専門チームをつくらないのか
大湯では昨年だけで100頭近くのクマが箱罠で捕獲されています。それでも、それ以上にクマの数は増えていると実感しています。 テレビや新聞に出てくる専門家は動物の専門家であって、山の専門家ではありません。クマについても専門家としては詳しいだろうが、学者の彼らが研究室で扱う「クマ」と、我々が相手にしている山にいる生きた「クマ」とは別物だということです。 現地から離れれば離れるほど、クマのことも山のことを知らない人になる。そんな人が権限を持って命令などを出すから、場違いな対応になるのです。 以前から思っているのですが、警察の中に有害獣駆除の専門チームを作ればいいと考えています。わざわざ民間人である我々に依頼するために書類だ、連絡だなどとする必要がありません。 東北の山は広い。だからそれぞれの警察署の中にではなく、広域をカバーできるような専従班をいくつか作ればいいのです。彼らに狩猟のことや山のこと、クマの習性などを教えるのは、それぞれの地域の猟友会が担えばいい。 役割は違うけれど、富山県の山岳警備隊は立派です。年間を通じて稼働していますし、登山技術だけでなく救助技術にも長けている。レジャーで来た登山客の生命を守るために日頃の鍛錬は怠らないし、それぞれが担当する山のことは隅々まで詳しい。 だから、登山客からも地域の誰からも尊敬を受けている。地域保全のため、住民の生命のために身体を張れる人材を時間はかかっても育成すべきなのだと思います。そうでないとまた同じことが起きてしまう。
警察が能力的にムリなら自衛隊に頼むしかない
以前あったスーパーK騒動で最後の4人目の遺体を搬送しようとした際、人間を餌として執着していたクマが襲ってきました。運よく怪我などはしませんでしたが、今回の大湯の件と同じだったのです。 その後、駆けつけた会員が現場近くをウロウロしていたクマを駆除しました。でもその1頭だけで良かったのか。人間の肉の味を覚えたクマは他にもいたのではないでしょうか。そう考えているのは私だけではありません。 場当たり的な対応しかしてこなかったから、捜索をする側にも教訓が残らずクマ対策が不完全なままなのです。 クマでさえ学習するのに、なぜ人間は学ばないのか。理解できません。 八幡平のクマ牧場の事件が起きた時にも呼ばれました。各地から20人近い会員が呼ばれたと思います。現場の仕切りをしていた警察の担当者は、どこからどうやってクマが何頭逃げたのかなど伝えることができず、事前に必要な情報が何もない状況でした。 「(猟友会では手が負えないから)自衛隊にお願いしてください」と伝えて、何度も断ったのです。でも、いくら断っても、警察は引き下がらなかった。
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