ツエーゲン金沢U-18 齋藤将基監督「全員の個性がきらめくようなチームにしたい」
J3ツエーゲン金沢のアカデミーチーム、U-18を指揮して3年目の齋藤将基監督は、金沢に2シーズン在籍したクラブOBでもある。今季はプリンスリーグ北信越を制し、プレーオフも勝ち抜いてプレミアリーグ昇格に照準を合わせる。主にFWとして国内外7つのクラブでプレーし、2014年から指導者の道を歩み始めた43歳だ。 埼玉県川口市出身の齋藤監督は、浦和東が第77回全国高校選手権に出場した時の主将で、背番号10を付けたプレーメーカーだった。 浦和東は過去2回の全国高校選手権で国見(長崎)に1-3、鹿児島実(鹿児島)に0-4といずれも1回戦で完敗していた。77回大会では大分(大分)との1回戦を2-0でものにし、3度目の出場で待望の初勝利を飾ったのだ。 卒業後はロサンゼルスで語学を学び、2000年にブラジルのアトレチコ・モンテ・アズルへ加入。02年は東海リーグ1部の静岡FC(現J2藤枝MYFC)でプレーし、翌年は中国リーグの広東雄鷹FCに1年間在籍した。 帰国後の04年に静岡FCへ復帰。06年はJ2東京ヴェルディで活躍し、リーグ戦29試合で7点を挙げた。08年は九州リーグの沖縄かりゆしFC、09年から3年間は当時神奈川県リーグや関東リーグ2部のSC相模原でプレー。12年からJFLの金沢に転籍して2シーズン戦い、13年をもってユニホームを脱いだ。 「引退後のことはいろいろ模索しましたが、セカンドキャリアでもサッカーに携わろうとは積極的に考えていなかったのです。そこへクラブからトップチームのコーチを打診され、少し迷いもありましたが、お引き受けしました」 指導者1年目の14年というのは、トップチームがJFLからJ3に上がった上、優勝してJ2昇格を果たしたシーズンだった。 記念の年にアシスタントコーチを任された。フロントは齋藤さんに光る何かを感じたからでは? と水を向けると「いやいや、たまたまですよ」と笑いながら首を振った。 15年はU-18コーチで、16年から18年までがU-15のコーチを担当。19年から21年まで再びトップチームでコーチを担い、22年からU-18監督としてさい配を振るっている。 育成年代の指導に当たり、確固たる信念が個の能力を伸ばすことにある。「選手一人ひとりが自分の個性をピッチで発揮し、全員の個性がきらめくようなチームにしたい」と理想像をこう説明する。 試合中、テクニカルエリアで指示を出す頻度は、監督によってさまざまだ。齋藤監督はどうだろう。「公式戦とトレーニングマッチでは違ってきますが、選手をサポートすることが基本になります。試合中に対戦相手がどう変化したのか、本来なら自分たちで感じ取って対応しないといけませんが、その手助けも仕事です。あとはしんどくなった時、『俺も一緒に頑張るぞ』という姿勢を示すようにしています」と述べた。 この春休み、第43回浦和カップ高校サッカーフェスティバルに招かれ、昨年に続く2度目の出場で初優勝を飾った。 予選グループリーグでは、浦和東時代の恩師である野崎正治監督率いる浦和南と同じ組に入り、師弟対決は1-1の引き分けだった。 高校時代の思い出を尋ねると、「たくさん怒られましたが、あれがあっての今の自分だと思っているので、感謝しています」と目を細めた。 その野崎監督は齋藤さんの印象について、「物事に動じないタイプ。キャプテンを任せていたが、言葉で鼓舞するというより背中で示し、プレーで引っ張る選手でした」と懐かしがる。かつては怒りまくった選手のひとりだが、今はリスペクトする対象だ。「知らない土地で信頼関係をつくり、自分で切り開いていったのだから大したもの。頼もしい教え子でうれしい限りです」と言って顔をほころばせた。 野崎監督は同じ指導者として参考になることも多いそうで、「ぶれないですよね。自分の信じることを徹底して続ける芯の強さはすごい」と感心する。齋藤監督はさらにこう続けた。「公立高校は有能な選手を大勢集められない状況ですが、それでも一定の結果をコンスタントに出す勝負強さがある。このあたりはひとりの勝負師として、今後もいろいろ学んでいけたらいいですね」 昨シーズンのプリンスリーグ北信越1部は、7勝4分け7敗の勝ち点25で6位だった。勝ち点39で優勝した帝京長岡(新潟)は、プレミアリーグ・プレーオフ代表決定戦で、浦和レッズユースを破って昇格を決めた。 6月9日の第8節終了時点で首位と勝ち点5差の7位。齋藤監督は「今季はレベルがきっ抗していて、戦力はどこもほとんど変わらない。今年は優勝しないとプレミアリーグのプレーオフに進めないので、そこへ向かって選手たちが頑張ってくれたらいいですね」と期待を寄せる。 今季J3に降格したトップチームが、J2への復帰を目指して奮闘しているようにU-18も齋藤監督の下、個性が光り輝くチームに仕上がるよう、トレーニングに励む日々を送っている。 (文・写真=河野正)