「遺留分」と「法定相続分」の違いを知らないと…相続から10年後に発覚する、とんでもない事実【弁護士が解説】
遺留分と法定相続分の具体例
遺留分と法定相続分について、具体例を紹介します。ここでは、被相続人の相続人が配偶者と長男、長女の3名である前提で解説します。 このケースにおける法定相続分 このケースでの法定相続分は、それぞれ次のとおりです。 ・配偶者:2分の1 ・長男:4分の1(=2分の1×2分の1) ・長女:4分の1(=2分の1×2分の1) つまり、生前贈与や遺言書などがなかった場合には、この割合をベースとして遺産をわけることとなります。 このケースにおける遺留分 このケースにおけるそれぞれの遺留分は、それぞれ次のとおりです。 ・配偶者:4分の1(=全体の遺留分割合2分の1×法定相続分2分の1) ・長男:8分の1(=全体の遺留分割合2分の1×法定相続分4分の1) ・長女:8分の1(=全体の遺留分割合2分の1×法定相続分4分の1) つまり、この場合において「長女に全財産を相続させる」旨の遺言書があった場合、配偶者は長女に対して遺産全体の4分の1相当、長男は長女に対して遺産全体の8分の1相当の金銭を支払うよう請求できるということです。
遺留分を侵害すると…
遺留分を侵害すると、どうなるのでしょうか? ここでは、順を追って解説します。 遺留分を侵害する内容の生前贈与や遺言書も有効 遺留分を侵害したからといって、生前贈与や遺言書が無効となるわけではありません。 たとえば、相続人が配偶者と長男、長女の3名である場合において、被相続人が長女に全財産を相続させる旨の遺言書があったとしても、遺言書の要件を満たしている場合、そのような遺言書も有効です。同様に、遺留分を侵害する生前贈与も、「あげます」「もらいます」という双方の意思が合致していたのであれば有効です。 遺留分侵害額請求がなされる可能性がある 遺留分を侵害する生前贈与や遺言書がある場合は、遺留分侵害額請求の原因となります。 遺留分侵害額請求とは、侵害された遺留分相当額を金銭で支払うよう、遺留分権利者が遺産を多く受け取った者に対して請求することです。たとえば、長女に対して全財産を相続させる旨の遺言書があった場合、被相続人の配偶者や長男から長女に対して、侵害された遺留分相当額の金銭を支払うよう請求される可能性があるということです。この請求がされると、実際に長女は配偶者や長男に対して遺留分侵害額相当の金銭を支払わなければなりません。 なお、遺留分の請求は以前は「遺留分減殺(げんさい)請求」という名称であり、物権的請求権でした。遺留分減殺請求では、請求することで自動的に遺産である不動産などが共有となるなどの問題が指摘されていました。そこで、2019年7月に施行された改正民法によって遺留分請求が金銭債権へと改められ、改正後は金銭での請求権となっています。