「遺留分」と「法定相続分」の違いを知らないと…相続から10年後に発覚する、とんでもない事実【弁護士が解説】
遺留分と法定相続分との主な違い
遺留分と法定相続分は、どのような点に違いがあるのでしょうか? ここでは、両者の主な違いについて解説します。 問題となる場面 1つ目の違いは、問題となる場面です。遺留分が登場するのは、被相続人による生前贈与や遺言書がある場合です。生前贈与も遺言書もない場合には、原則として遺留分は登場しません。一方、法定相続分は遺産をわける基準となります。 ほかに、相続税の基礎控除を計算する際など、さまざまな場面で基準となります。 権利者 2つ目の違いは、権利者です。法定相続分の権利を有する法定相続人は、次の者です。 1.配偶者 2.第1順位の相続人:被相続人の子ども。被相続人の死亡以前に亡くなるなど相続権を失った子どもがいる場合は、その亡くなった子どもの子どもである被相続人の孫 3.第2順位の相続人:被相続人の父母。父母がいずれも亡くなっている場合は、被相続人の祖父母 4.第3順位の相続人:被相続人の兄弟姉妹。被相続人の死亡以前に亡くなるなど相続権を失った兄弟姉妹がいる場合は、その亡くなった兄弟姉妹の子どもである被相続人の甥姪 なお、第2順位の相続人と第3順位の相続人は、第1順位の相続人が1人でもいる場合は相続人となりません。同様に、第1順位の相続人がいなくても第2順位の相続人が1人でもいるのであれば、第3順位の相続人は相続人とはなりません。被相続人に配偶者がいれば、第1順位の相続人から第3順位の相続人とともに、常に相続人となります。 一方、遺留分の権利のある者は、相続人のうち、第3順位の相続人以外の者です。相続人ではない者に遺留分がないことはもちろん、兄弟姉妹や甥姪はたとえ相続人になる場合であっても、遺留分権利者とはなりません。 割合 3つ目の違いは、割合です。遺留分の割合は、原則として法定相続分の2分の1です。ただし、第2順位の相続人だけが法定相続人である場合は、遺留分割合が例外的に3分の1となります。遺留分割合と法定相続分の具体例は、後ほど改めて解説します。 相続放棄の方法 4つ目の違いは、放棄をする方法です。相続人としての権利の放棄を「相続放棄」といいます。相続放棄をすると、はじめから相続人ではなかったことになります。一切の遺産を相続する権利がなくなるほか、被相続人の借金を承継することもなくなります。また、遺留分の権利は法定相続人であることが前提となっているため、相続放棄をすると当然に遺留分の権利も喪失します。 相続放棄ができるのは、相続発生後だけです。また、相続放棄をするためには、自己のために相続の開始があったこと(被相続人が亡くなったことと、それにより自分が相続人となったこと)を知ったときから3ヵ月以内に家庭裁判所で手続きをとらなければなりません。 一方、遺留分の放棄は被相続人の生前に行うこともできます。ただし、被相続人の生前に放棄を行う場合は、遺留分権利者が自ら家庭裁判所で手続きをして許可を受ける必要があります。 なお、相続開始後であれば、遺産を多く受け取った者などに対して自発的に「遺留分は請求しません」などと告げて、放棄できます。この場合、家庭裁判所の許可は不要です。