「遺留分」と「法定相続分」の違いを知らないと…相続から10年後に発覚する、とんでもない事実【弁護士が解説】
遺留分侵害額請求をする場合には注意点も
遺留分を侵害する内容の生前贈与や遺言書の存在は、遺留分侵害額請求の原因となります。では、遺留分侵害額請求をする際は、どのような点に注意すればよいのでしょうか? ここでは、主な注意点を3つ紹介します。 遺留分侵害額請求には時効がある 遺留分侵害額請求には時効があり、時効を過ぎてしまうと、もはや請求することはできません。遺留分侵害額請求の時効は、相続の開始(被相続人の死亡)と、遺留分を侵害する贈与や遺贈があったことを知ったときから1年間です(民法1048条)。 また、被相続人の死亡や遺留分侵害の事実を知らないまま年月が経過したとしても、相続開始から10年が経過する遺留分の権利は消滅します。そのため、遺留分侵害額請求は、時効に注意したうえで期限内の請求が必要です。 また、遺留分侵害額請求は口頭や普通郵便などで行っても効力は生じるものの、期限内に請求したとの証拠を残すため、一般的に内容証明郵便で行います。内容証明郵便とは、いついかなる内容の郵便が誰から誰に差し出されたか、差出人が作成した謄本によって日本郵便株式会社が証明する制度です。 一定の生前贈与も遺留分に算入できる 遺留分の計算の基礎となるものは、被相続人の死亡時に遺っていた財産(遺産)だけではありません。被相続人が行った次の生前贈与の対象とされた財産も、遺留分計算の基礎に含まれます(同1044条)。 ・相続発生前1年以内に、相続人以外に対してした贈与 ・相続発生前10年以内に、相続人に対してした贈与 ・これらより前に行った贈与のうち、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って行ったもの そのため、遺留分侵害額請求をする際は、対象とすることができる贈与を漏らさないよう注意しましょう。遺留分計算の基礎に含められるか迷う場合は、弁護士へ相談することもできます。 生命保険は原則として遺留分算定の基礎とならない 被相続人が保険料を払い込んでおり、相続人などが受取人として指定されている生命保険は、原則として遺留分計算の基礎に含めることができません。 ただし、たとえば遺産の大半を生命保険とした場合など「保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が同条の趣旨に照らして到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合」には、例外的に遺留分の計算の対象となる可能性があります(最決平成16年10月29日)。 具体的なケースにおいて、生命保険を遺留分計算の基礎に含めることができるかどうか判断に迷う場合は、弁護士へ相談するとよいでしょう。
遺留分を侵害されたら
遺留分と法定相続分の概要や、主な違いについて解説しました。 遺言書などがない場合、原則として法定相続分をベースとして遺産をわけることとなります。一方で、遺言書などで相続での最低限の取り分である遺留分を侵害された場合は、遺留分侵害額請求の対象となります。遺留分の請求には期限があるため、遺留分を侵害された場合はお早めに弁護士へ相談することをお勧めします。 堅田 勇気 Authense法律事務所
堅田 勇気