遺言のデジタル化解禁でどう変わる?【WBSクロス】
“直筆が条件”が終活の壁に
本人の直筆を求める現在のルール。遺言書を作りたい人にとっても、そのハードルは低くありません。 神奈川県に住む中里さんは70代後半に差し掛かり、遺言の準備を始めたといいます。 土地は自宅とアパートに分けて活用していて、広さは330平方メートルほどあります。先祖代々100年以上受け継がれてきたこの土地。中里さんは4人の子供たちへの相続を検討しています。 「ようかんを切るように土地はうまくいかない。争いの相続にならないようにやってもらいたい」(中里さん) こうした相続や遺言に関する悩みを、弁護士などに相談できる「相続・終活カフェ」。ここに中里さんの姿がありました。 「書かなければいけなかったことは改めて書けばいい?」(中里さん) 「また同じことを書いてもらっても問題ない」(司法書士) 「改めて新しい紙に書くのか?」(中里さん) 「新しい紙」(司法書士) 直筆で書く遺言には定められた書式もなく、過失や修正が必要になった場合、全て書き直す必要があります。
デジタル化でどう変わる
そんな遺言に関する制度が今、変わろうとしています。 「デジタルの技術が発達してきているので、偽造を防ぎ信用性を維持しながら、本人の負担を減らす方法があっていい」(小泉法務大臣・2月13日記者会見) デジタル技術を使った遺言書の作成を認める方向で議論が進んでいます。 課題の一つがデジタル化した遺言書を本物だとどうやって証明するのか。都内にオフィスを構える「弁護士ドットコム」で提供しているのが、クラウドサインという電子署名サービスです。現在、企業向けにサービスを提供していて、これをデジタル遺言にも活用できるのではと国も注目しています。 「現在のスーパーコンピューターでも(改ざん)できないものになっている。書類に改ざんを加えてわからないようにすることは事実上できない」(「弁護士ドットコム」クラウドサイン製品担当の安藤陽介さん) 電子署名の特徴は、高いセキュリティー性。文書の署名と閲覧、それぞれに必要な暗号が結びついていて、不正行為を防ぐ仕組みとなっています。より高い安全性が期待できるというデジタル遺言。ただデジタルならではの課題もあるといいます。 「遺言者本人が亡くなった場合、(遺言が)あることすらわからない可能性が高まる。保管制度を作り、本人が亡くなった場合に知らせるべき人に知らせる制度を作るべき」(「弁護士ドットコム」政策企画室の佐藤帯刀室長) ※ワールドビジネスサテライト