パンクの心配もなし!サステナビリティと安全性を両立させた次世代タイヤ「AirFree」が秘める大きな可能性
「AirFree」は、ブリヂストンが2008年から開発がスタートした、空気充填の要らない次世代タイヤ。 【ランキング7つ】5000人に聞いた最も好きな日本の自動車メーカーランキング、1位はトヨタ!2位、3位は?世代別の差 第1世代は(下記画像左)、車重は200kg程度、超低速の時速6km以下というシニアカーに類する一人乗りのスローモビリティ向けのタイヤとして開発を開始し、2013年からは第2世代(同中央)として、車重が500kg程度、時速45kmの低速一人乗りのモビリティ向けとして開発を進めた。 そして昨年から出光興産と共創して実証実験を行っているのが第3世代(同左)。将来のモビリティ社会を見据えた、車重が1000kg程度、時速60km程度の中速2~4人乗りの超小型EV向けとして開発を進めている。
地域社会の足を支える空気の要らない次世代タイヤ「AirFree」
「AirFreeは当初から将来のモビリティ社会を見据えた新たなイノベーションとして挑戦をしてきました。その中核に据えているのがサステナビリティです。第1~3世代のいずれも、将来の地域社会のモビリティを支えるというミッションを掲げ、環境に配慮したコンセプトで開発を進めています」(株式会社 ブリヂストン ソリューション開発第2部長 岩淵芳典氏) 高齢化や過疎化、労働力不足など地域交通が課題となる中で、今後、地域社会で必要とされる小型で低速、自動運転が可能な「グリーンスローモビリティ」(後述・以下グリスロ)が注目されている。 AirFreeが掲げる提供価値は、安心安全、サステナブルな技術で地域社会のモビリティを支えるということで、グリスロとの親和性が高い。 AirFreeは空気の充填が要らないタイヤであるため、従来のタイヤと比べて省メンテナンス。空気の代わりに側面の青色スポークで荷重を支え、パンクなどの空気圧に起因する故障も発生しないことから“移動を止めない”メリットがある。 そしてもう一つのメリットがサステナビリティ。空気入りタイヤはゴムや金属コード、有機繊維、金属ワイヤー等様々な素材の高度な複合体。一方、AirFreeは路面に接するゴムと、荷重を支える熱可塑性樹脂のスポークによるシンプルな2ピース構造となっている。 路面に接するゴムの部分は摩耗すればリトレッド(新しいトレッドに交換して再利用する)を行い、樹脂部分は破砕してペレット原料化し繰り返し使うという、サーキュラーエコノミーを大前提としたシンプルな2ピース構造としている。現段階で暫定的に目標にしている樹脂部分の耐久性は10万km程度。 「技術が進化することによって、第1、第2世代のデザインコンセプトからの変更もありました。例えば、素材であれば当初は非常に固くて頑丈な素材を使っていましたが、第3世代では、強くてしなやかな素材の開発に成功しました。 頑丈に作っていた構造に対しても、適切にひずませることで乗り心地なども改良しています。素材を活かした接地の最適化とひずみの制御、さらに機械学習によるデジタルの仮想空間の中で数多くの試作を繰り返して、最適化した形状のデザインを導き出しました」(岩淵氏) グリスロのような小型で低速のモビリティは、周囲から見えやすい視認性の高さが安全の向上につながるため、カラーに関しては、交通事故が多発する薄暮時に視認性を最大化させる色として『Empowering Blue』を採用。暗くなると青や緑などの短波長色が明るく見え、赤などの長波長色が暗く見える“プルキンエ現象”を考慮して選定した。 AirFreeは2026年の社会実装に向けて開発を継続しており、現在は公道での実証試験を行っている。2030年以降はグリスロだけでなく、小型EV車を主体とした様々なモビリティへの実装も視野に入れた事業へ成長させることを目指す。 発表会には、グリスロの導入を積極的に行っており、今後AirFreeを装着した試験車両に参加を検討している滋賀県東近江市、富山県富山市、群馬県みなかみ町、東京都杉並区の4自治体が出席し、AirFreeを装着した車両の試乗走行を体験した。 2021年4月から道の駅「奥永源寺渓流の里」を拠点とした自動運転サービス「けい流カー」を実施している、東近江市の担当者は試乗の感想をこう語った。 「従来のタイヤと比べてもほとんど違和感がありませんでした。少し荒れている道路は樹脂とゴムなのでノイズがあるかと想像していましたが、普通のタイヤとほとんど変わらない感覚でした。 安定した走行性を実感しましたし、自動運転サービスやメンテナンスフリーという点も非常にグリスロと親和性が高く、まずはグリスロで検証を重ねていくのがベストだと感じました」