人間関係、交際のウワサにまつわる調査も社労士の仕事…!? 社労士の実体験を描いた『御社のモメゴト』原作者に聞く
「社労士」のお仕事ってご存知ですか? 社労士=社会保険労務士は、人事・労務管理・社会保険の専門家として、企業の人事や労務に関する相談に対応したり、様々な手続きや書類作成の代行をしたりするお仕事です。セクハラやパワハラ、不当解雇や残業代の未払いなど、さまざまな問題に対応しますが、まれに「社内不倫のウワサ」への対応を相談されることも…。 【マンガ】『御社のモメゴト それ社員に訴えられますよ?』を最初から読む 『御社のモメゴト それ社員に訴えられますよ?』はそんな社労士を主人公としたお仕事マンガです。原作者の村井真子さんは現役の社会保険労務士として活躍中。これまで村井さんが実際に体験してきたリアルなエピソードをもとに、このマンガは描かれました。 ■『御社のモメゴト それ社員に訴えられますよ?』はこんな作品 30代のシングルマザー・真実(まみ)は、独立して2年目の社会保険労務士。ある日舞い込んできた新規の相談は、お得意先からの紹介案件。その会社のやり手課長と部下の女性が不倫をしているという噂が社内に広まり困っている、というものでした。 「不倫案件って社労士の仕事なのかしら?」と言いつつも、真実はさっそく依頼してきた会社に調査にむかいます。関係者からヒアリングしていくと、不倫関係を密告する陰湿な匿名FAXには、ある社員の妬みやセクハラが関係していることがわかってきて……。 そんな『社内不倫のウワサ』のエピソードの他、『不当解雇』『社員の音信不通』のトラブルに真実が社労士として立ち向かっていく様子が描かれます。 この作品について、原作者の村井さんにお話を伺いました。 ■『御社のモメゴト それ社員に訴えられますよ?』原作者インタビュー ──この作品のエピソード1『社内不倫のウワサ』は、社内不倫の噂をたてられ困っているという案件を解決する内容です。上司、部下、同僚という人間関係、そしてキャリアとの兼ね合いなど、社内不倫のウワサからどんどん問題が掘り下げられて読み応えがありました。このお話で伝えたかったことはどんなことだったのでしょうか。 村井真子さん:職場のトラブルで最も多いのは人間関係によるものです。労働問題や給与・報酬の問題よりも、いじめや差別に関するトラブルが多いのです。このエピソードではセクハラの問題も扱っていますが、どこまでをセクハラと感じるかという感覚も個人差があり、ある人にとってはトラウマになるような出来事でも「そんなこと」と流してしまう人もいます。犬にかまれたと思って忘れるという慰めの文句がありますが、犬にかまれたことをずっと覚えている人もいるのです。この話では人の痛みは自分では分からないということ、そのことを忘れると大きなトラブルに発展するということをお伝えできればと思いました。 ──ヒアリングの肝、落としどころの相談などトラブル対応のテクニックも満載で、読んでいて「なるほど!」と思いました。トラブル対応で大切なポイントを教えてください。 村井真子さん:トラブルが発生した場合は初動対応が極めて重要です。トラブルの種類にもよりますが、最も重要なのは優先順位を間違えないで対応することです。まずは現状把握、問題となる事象との切り離しをします。トラブルが起こると当事者や関係者も動揺しますし、記憶が混乱してしまうこともあるので、まずは正確に情報収集をすること、その情報を先入観なく扱うことがポイントなのではないかと思います。 ──主人公・真実(まみ)の仕事への姿勢も前向きで気持ちがいいですし、彼女の成長も作品の見どころかなと思います。真実というキャラクターについて魅力を教えてください。 村井真子さん:真美は駆け出しの女性社労士です。何事にも一生懸命で努力家ですが、ある辛い過去もあり、それをなんとか乗り越えようともがいているキャラクターです。気負いすぎて空回りもし、そんな自分にがっかりもするけれど、気持ちを切り替えて前に進もうとするところが魅力だと思います。 真美は社労士として私自身がありたい姿、すてきだと思う姿を詰め込んだキャラクターです。ワーキングマザーでもあり、仕事にやりがいを感じつつ子どもとの時間を大切にしているところも共感いただけるのではないかと思っています。 * * * 丁寧なヒアリングから社内不倫の噂の出どころを突き止めた主人公の真実。その仕事ぶりや、当事者たちの心情もリアルに描かれていて、読み応えのあるエピソードです。 「社労士ってなんとなく聞いたことはある」「仕事で社労士と接点はあるけどその実態はよくわからない」という方も、このマンガで社労士の仕事の裏側を覗いてみませんか? ■【原作者プロフィール】 村井真子(むらいまさこ)……社会保険労務士/キャリアコンサルタント/経営学修士(MBA) 総合士業事務所で経験を積み、愛知県豊橋市にて2014年に独立開業。移住・結婚とキャリアを掛け合わせた労働者のウェルビーイング追及とともに、労務に関する原稿執筆、企業研修講師、労務顧問としても活動している。士業を含め取引先は160社以上。著作に『職場問題グレーゾーンのトリセツ』、原作に『御社のモメゴト それ社員に訴えられますよ?』、監訳に『バウンダリーレス・キャリア上巻』『組織と従業員の間で変化する心理的契約』『経営心理学』など。 取材=ナツメヤシコ/文=レタスユキ