転職エージェントのカモにされる「おいしい人材」の致命的な特徴
この例は新卒のレベルの方が会社のレベルよりも高かったという話ですが、逆もあるわけです。 会社のレベルが上がると、それについて行けない社員が出てきます。長く働いて貢献してくれた幹部もついて行けないことを理由に辞めることがあります。 ● 若い社員の間に広がる「転職=トレンド」の意識 会社の魅力アップ・待遇向上は必須事項 以上は、レベルに合わない社員はレベルが上でも下でも辞めていくという話です。 もうひとつは、転職を理由に辞めることが若い社員の間でトレンドみたいになっているという話です。 テレビを見ていると転職エージェントのCMが頻繁に流れます。このCMを浴びるほど見ていると、どんな人でも辞めない方がおかしいという気分になってきます。辞めないまでも、転職エージェントに登録だけはしておこうなどと考えるかもしれません。 転職エージェントにとって一番美味しい人は、周りの空気に流されて迷う人なのです。そういう人が2年、3年で転職を繰り返してくれると、転職エージェントにはたくさんのフィーが入ってきますが、転職を繰り返した人材の方はたいしたキャリアもないまま年齢だけが高くなって、ある時採用してくれる会社がないことに気がつきます。 もちろん、辞めるのは周りの空気に流されて迷う人ばかりではありません。他社の情報や転職情報が氾濫している時代だから、一生懸命働いている人でも自分の将来の姿が見通せない会社だと分かると、転職エージェントに登録しようという気持ちに変わってしまいます。 会社の立場で考えると、転職エージェントに勝って、社員の気持ちをつなぎ止めないといけないのですから、対策を立てなければなりません。 例えば、他社よりも魅力のある会社だということを示すこと。この会社で懸命に働くと5年後、10年後に、どのような地位に就いて、どのようなキャリアが身に付くのかが分かる仕組みです。若い人を見ていると、少々負荷がかかっても働きがいを大切にする傾向があるようです。 会社は社員が働きがいを感じ、自分の未来の姿も感じながら、力を発揮できるステージを用意しなければなりません。 もちろん待遇の向上も重要です。報酬も休暇も最低でも他社並み、できれば他社以上のものを用意しないと、社員を慰留することができません。 会社のレベルを上げること、会社の魅力を高めること。この二つこそ、社員が辞めない会社を作る秘訣(ひけつ)です。
小宮一慶