「カバーマーク」の落としながら潤うクレンジング トリートメントクレンジングの元祖をひもとく
2009年から続く「WWDBEAUTY」のベストコスメ特集では、バイヤーのアンケートをもとに本当に売れた商品を表彰する。「ベストコスメ歴代名鑑」では、15年以上続く本特集の中でも常にランキングに入賞している“傑作”をピックアップ。時代を超えて愛される理由や商品の魅力について、美容ジャーナリストの加藤智一が深掘りする。今回は「カバーマーク(COVERMARK)」の “トリートメント クレンジング ミルク”にフォーカス。
クレンジングカテゴリーでは、今でこそメイク汚れを落しつつ肌に潤いを与えるタイプの“美容液クレンジング”がさまざま発売されているが、その先駆けともいえる「カバーマーク」の“トリートメント クレンジング ミルク”(200g、3300円)が発売された2009年当時は、クレンジング=汚れを落すものであり、洗浄後の肌は乾燥するがそれは保湿ケアで補うという考えが一般的だった。そもそも、“汚れを落す”と“肌を保湿する”、という一見相反する役割をひとつのアイテムに集約させることを考えるブランドは少なかったのかもしれない。“トリートメント クレンジング ミルク”はそんなトレードオフの考えを見事に両立させた画期的なクレンジングミルクだった。
汚れを落しながら保湿をする、という考えは、実は「カバーマーク」のブランドのルーツに起因する。「カバーマーク」は1928年にあざ、傷跡や皮膚の変色を自然に隠す化粧品の発売から始まったブランドだ。そのためファンデーションはハイカバータイプも多くそろっており、クレンジングにはハイカバーメイクをすっきり落とせる洗浄力が求められた。しかし、洗浄力が高くなるほど、肌の潤いも落とされてしまう。そんな理由から高いクレンジング力を確保しながらも、肌への潤いを維持するクレンジングの開発が必須だった。
そして研究開発をはじめてから約5年。洗浄力と保湿力を確保するための二つの技術を新たに開発した。一つは、洗浄成分を多量に配合しなくても高洗浄を実現する「アクアクレンジングゲル構造」。肌の上で崩れやすい構造にすることで摩擦することなく、ハイカバーなメイク汚れを素早く浮かせ、洗い流すタイミングではナノ粒子化させることできれいにオフできる仕様にした。二つめが、甲殻類から抽出した高分子の食物繊維、キトサンを応用した成分「MCキトサン」だ。ヒアルロン酸の約2倍もの保湿力をもつこの成分は、細胞がもつ電気的性質とひきあうためにクレンジングを洗い流した後も肌に吸着。クレンジング後も高い保湿力を維持できるようになったのである。