スタバで「フラペチーノ」飲む人が知らない“真実” コーヒーにこだわっているはずのスターバックスが「コーヒーじゃない看板商品」を持つ凄さとは?
スタバはこの社会学の概念を掲げて、顧客がリラックスできる空間を作ることを目指している。 しかし、この「サードプレイス」という概念は、提唱者のオルデンバーグの考えではかなり厳密に定義されている。それは例えば、「会話が重視される」とか、「中立な場所である」「平等な場所である」というように決められていて、そこで提唱される8つの条件に合致してはじめてその場所がサードプレイスとなるのである。 これらの定義と比べるとスタバはどうか。細かくは今後の連載で検討するけれども、やはりスタバ内で「会話」が多く飛び交っている光景は想像しにくいし、そもそもそこは商品を買わなければアクセスすることのできない空間で、決して平等な空間ではない。
サードプレイスではないにもかかわらず、サードプレイスであることを喧伝している、ここにも矛盾があるだろう。 スタバを考えていくと、そこかしこにこうした「矛盾」が現れるのだ。 ここで筆者は、「矛盾」を抱えているスターバックスが不誠実だと非難したいわけではない。むしろ、その「矛盾」こそがスタバをここまで巨大な企業に成長させたのではないかと考えているからだ。 例えば、先にも触れたフラペチーノこそが、1990年代後半のスタバがグローバル企業になる足がかりになったと、ブライアン・サイモンは指摘する。
スタバがスペインに進出する際、フラペチーノのような、本場のコーヒーショップには置かれない商品があることで、既存のカフェと競合することなく出店を伸ばすことができたのはその一例だろう。スタバの「矛盾」を生み出すフラペチーノは、スタバの躍進を助けているのである。 ■ビジネスとしてきわめて有効に働いている「矛盾」 そして、詳しくは次回以降に譲るが、スタバを世界的企業に育てたハワード・シュルツは最初、フラペチーノを販売することに反対の立場だった。
「純粋主義なわたしは『どうしてわたしたちはこれをやろうとしているんだ? フラペチーノの会社にはなりたくない。うちはコーヒーの会社だ』と言ったんです」(「フラペチーノに反対したのは『間違いだった』スターバックスの元CEOハワード・シュルツ氏が明かす」/Business Insider Japan) もし、スタバがコーヒーにこだわり、フラペチーノを捨てていれば……。 「そこにしかない」という特別感は「スタバに行きたい!」という動機を否応なしに私たちに持たせるが、それで実際に店舗が一店舗しかなければ、ビジネスとしての成長はない。「そこにしかない」のに「どこにでもある」、つまり行きやすいということで実際の利益を多くあげられるのだから、ビジネスとしてこの「矛盾」はきわめて有効に働いているといえるだろう。