スタバで「フラペチーノ」飲む人が知らない“真実” コーヒーにこだわっているはずのスターバックスが「コーヒーじゃない看板商品」を持つ凄さとは?
筆者はチェーンストア研究家としてこれまでいくつかの書籍を出版し、チェーンストアについて消費者の視点から考えてきた。その知見からみても、スタバがこのような「特別感」を持っているのは非常に稀有なことだと思う。 本連載で私が向き合いたいのは、この「特別感」である。 ■スタバが抱える「矛盾」とは? ここで私は指摘したい。スタバの「特別感」とはそこに存在する「矛盾」にあるのだ、と。スタバは「矛盾」した存在で、それこそが、その不思議なカフェを考えるヒントになる。これを明らかにするために、少しだけ脱線した話をしたい。
かつて、「木更津キャッツアイ」というドラマがあった。この作品は2002年に放送された宮藤官九郎のテレビドラマで、題名のとおり、千葉県木更津を舞台にした青春群像劇だ。この中のセリフがとても興味深い。ヒロイン的存在である酒井若菜演じるモー子は、神社でこうお祈りする。 「木更津にスタバができますように!」 このセリフは、スタバが持つイメージが詰まっている。それをはっきりさせるためには、例えば、このセリフをこう変えてみるとわかりやすい。
「木更津に吉野家ができますように!」 たぶん、こう願う人はいないと思う。やはり、このセリフはスタバでなければならない。 では、なぜスタバでないといけないのか。それは、スタバが「そこにしかない」という特別感と関係が深いからだ。このドラマでは木更津が地方・郊外の「何もない」場所として描かれているが、そこに輝きをもたらす存在として「スタバ」は描かれている。スタバは「特別」で、「そこにしかない」なにかがある場所だというわけだ。
しかし、実際のデータを見てみると、興味深いことがわかる。 例えば店舗数だ。公式サイトによると、日本にあるスタバの数は、実に1885店舗(2023年9月末時点の数字)。これは、日本の飲食チェーンにおいてマクドナルド・すき家に続いて多い数字だ。 カフェチェーンとしては一番の数で、ドトールコーヒーは1068店舗だし、タリーズコーヒーは777店舗、コメダ珈琲でも968店舗である(ともに2023年2月末現在。すべて公式サイトによる数値)。ドトールとタリーズを足しても1845店舗なので、スタバのほうが多い。