日本人メジャーリーガーの滑り込みトレードは無風?
6月半ば、シアトル郊外のゴルフ場「チェンバーズ・ベイ」で行われたゴルフの全米オープン。その会場でシアトル・タイムズ紙のマリナーズ番記者だったジェフ・ベイカーと久々に顔を合わせると、一緒に昼食をとった。 彼はマリナーズの現場から離れ、「インサイド・スポーツビジネス」というコラムを担当しているが、もちろんマリナーズのコラムもたまに書いている。最初は近況を伝え合いながら世間話をしていたが、話の途中、前振りもなく、唐突に彼が聞いた。 「なあ、イチローにマリナーズに戻る気はあるんだろうか?」 真意を図りかねていると、彼は続ける。 「マリナーズの外野守備はひどい。内野手を無理矢理外野にコンバートしたり、ネルソン・クルーズやセス・スミス、ダスティン・アクリーの守備など、目を覆いたくなる」 そのことは否定できないが、さらに彼はリードオフの問題についても指摘した。 「今、ローガン・モリソンが1番を打っているが、どういうことだと思う?消去法だ。決してリードオフタイプではないが、彼しかいないんだ」 分かりやすくまとめれば、今のマリナーズの外野陣は守備に難がある選手ばかり。そしてリードオフを任せられる選手がいないということだが、 ベイカー記者は、「今のマリナーズに必要なのは、イチローのような選手だ」と、話を進めた。 その考えをまとめたものが6月28日付けシアトル・タイムズ紙の「短い期間に限定して、マリナーズはイチローを呼び戻すべきだ」という見出しの記事だが、指摘は決して間違っていない。補足すれば、2012年7月にイチローがヤンキースへトレードされて以来、固定された1番打者は不在で、右翼手もいない。ジャック・ズレンシックGM(ゼネラルマネージャー)が、パワー重視に舵を切ったため、気づけば指名打者タイプばかりという、いびつな戦力構造となっている。 そこまで考えると、確かにイチローはマリナーズに必要な戦力に映り、シアトル・タイムズ紙の読者も、イチローを戻すべきか? というウェブサイトのアンケートで68.59%(1474人)が「YES」に投じていたが、現時点ではあくまでも仮想チームを作って楽しむ「ファンタジー・ベースボール」の域を出ていない様にも感じる。それぐらい現実味が薄い。