FFスポーツ実験は大成功! ホンダCR-X シビック 2台の「Si」(1) タイプR誕生前夜
全長は3675mm 新しい種類のMGミジェット
ホイールベースは、3代目シビックより短い2200mm。全長は3675mmしかなく、新カテゴリーを開拓した存在といってもいい。その頃のAUTOCARは、「新しい種類のMGミジェット」だと表現している。 ご存知の通り、日本仕様や欧州仕様にはリアシートが存在した。荷室の床面部分を立ち上げた簡素なベンチシートで、座れても子ども程度だったが。北米仕様では、前席のみの2シーターという設定だった。 ハッチバックのシビックより実用性は劣るが、前席側の空間は驚くほど広い。リアハッチの下には、意外なほど大容量の荷室が隠れている。 車重は830kgと軽量で、バンパーだけでなくフロントフェンダーとフロントパネルもプラスティック製。ホンダの技術者、川本信彦氏は、自動車雑誌のカー&ドライバーの取材で、「効率は性能に等しい」と1984年に発言している。軽さも、その1つといえた。 フロントサスペンションは、コンパクトなトーションバー式。フォルクスワーゲン・ビートルより洗練され、横方向に渡されたバーが、スプリングの役割を果たす。次世代ではコイルスプリングへ戻されるが、機敏なシャシーの一部を構成している。 リアサスペンションは、コイルスプリングが支えるビームアクスル。高度な設計とは呼べなくても、クーペの能力を充分に引き出せた。
以心伝心するようにクルリと回頭
他方、CR-X Siのステアリングレシオは、通常のモデルよりスロー。アンチロールバーと幅の広いタイヤが組まれることで、クイックすぎると判断された。 ロックトゥロックはほぼ4回転。オーバーハングはほぼないといえ、以心伝心するかのように、クルリと向きを変える。ボディロールも極小。それでいて、同時期のプジョー205やフォード・フィエスタと比較して、高速走行時の直進性にも優れる。 実際にステアリングホイールを握ってみれば、CR-X Siは往年のホットハッチのイメージそのまま。フロントタイヤのグリップ力は高く、リアタイヤはそれについていく感じ。操縦性はアンダーステアに近いものの、きっかけを与えない限りほぼニュートラルだ。 今回の試乗はアメリカン・ホンダ・モーター社の敷地内に限られ、乗り心地は確かめにくい。荒れた公道では、旋回中にリアタイヤが跳ねる可能性はある。少なくとも、速度抑制用のスピードバンプでは、構わず通過しても暴れることはなかった。 この続きは、ホンダCR-X シビック 2台の「Si」(2)にて。
チャーリー・カルダーウッド(執筆) マックス・エドレストン(撮影) 中嶋健治(翻訳)