〔海外〕2024年11月の災害を振り返る
2024年11月に発生した海外での大規模な災害、事故・事件の案件について振り返ります。 ※被害の内訳については、原則的にレスキューナウによる情報取りまとめ時のものです。それぞれの記事の最終更新日以降の状況については反映されていないことがあります。 ●11月 【自然災害】インドネシアの火山噴火で9人死亡 [被害]死者9人 負傷者64人 2024年11月3日から、インドネシアの東ヌサ・トゥンガラ州フローレス島にあるレウォトビ・ラキラキ山で噴火が連日発生した。大規模な噴火も発生し、火砕流などで現在までに9人が死亡、64人が負傷しているほか、噴石などにより学校7校、民家23戸に被害が出た。 この一連の噴火で、バリ島デンパサール空港やフローレス島西部ラブアンバジョの空港を発着する便に多数の欠航が出た。 また、7日と9日に発生した大規模な噴火では、日本の気象庁が火山噴火によって生じる気圧波による日本の沿岸への津波の可能性があるため調査したが、「日本への津波の影響はない」と発表した。 【事件】中国各地で無差別殺傷事件相次ぐ 社会不安など背景か [被害]死者43人 負傷者70人以上 ※2024年11月のみの合計数 2024年11月11日20:50頃(現地時刻11日19:50頃)、中国広東省珠海市のスポーツ施設で小型のスポーツ用多目的車(SUV車)が暴走し、施設周辺で運動していた人々を次々にはねて逃走した。この事件で35人が死亡、43人が負傷した。犯人とみられる男は逃走後に自殺を図り、重傷を負った。男は離婚後の財産分与を巡る裁判の判決に不満を持ち事件に及んだと報じられた。 11月16日19:30頃(現地時刻16日18:30頃)、江蘇省無錫市の無錫工芸職業技術学院で、同校の元学生の男が刃物で無差別に切りつけ、8人が死亡、17人が負傷した。男は試験に失敗し卒業を認められなかったほか、実習先での勤務時間や報酬に不満を持っていたとの報道もあった。 さらに、11月19日08:37(現地時刻07:37)には、湖南省常徳市の小学校前で、登校のため集まっていた児童と保護者らに向かってSUV車が走行して襲いかかる事件が発生、十数人が病院に搬送された。車を運転していた男は、その場で取り押さえられた。 相次いだ3件の事件を受け、習近平国家主席をはじめ、国や地方の幹部が再発防止を指示した一方で、報道の抑制や外国報道の遮断、ネット上に投稿された事件に関する画像や動画を削除する動きも見られた。 今年に入って、中国では無差別に人々を襲撃し殺傷する事件が相次いで発生している。6月には10日に吉林省吉林市で、滞在中だったアメリカ人の大学教員4人が刃物で襲われ負傷したほか、24日に江蘇省蘇州市で日本人学校のスクールバスから降りる児童と迎えていた母親が襲われ、バスの添乗員が死亡した。9月8日には広東省深セン市で日本人学校に登校していた児童1人が刃物で襲われ死亡、10月には浙江省寧波市と広東省広州市、北京市で中国人の児童らが切りつけられ負傷する事件が発生し、北京市ではさらに小学校付近で児童と保護者が襲われる事件もあった。これらの事件の背景として、景気の後退による生活難や極端なナショナリズムによる外国人憎悪、抑圧的な政府による社会不信が攻撃的な事件につながると指摘する見解もあった。 【テロ】パキスタン北西部でイスラム教の宗派間抗争により多数の死傷者 [被害]死者82人 負傷者156人 2024年11月21日から24日にかけて、パキスタン北西部のカイバル・パクトゥンクワ州のクラム地区で、イスラム教の宗派間抗争が発生し、これまでに82人が死亡、156人が負傷した。また、およそ300世帯の住民が避難している。 パキスタンでは国教であるイスラム教の中でも、多数派を占めるスンニ派と少数派のシーア派によって構成されているが、今回、宗派間抗争が発生したクラム地区はシーア派の人口も多いことから、これまで数十年にわたり2つの宗派の対立が続いてきた地域である。 今回の抗争の発端となったのは、21日、クラム地区でシーア派の人々が乗っていた複数の車両がおよそ10人の武装集団に襲撃され、少なくとも43人が死亡したテロ事件である。この事件後、23日にかけてスンニ派とシーア派の間で銃撃戦が続いたほか、住宅や商店、政府施設などが放火された。 この一連の抗争を受けて、カイバル・パクトゥンクワ州政府は事態の収拾に乗り出し、州政府の代表団が23日にシーア派側と、24日にスンニ派側とそれぞれ会談し、24日から7日間の停戦合意が成立した。
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