「世の中にとっても芸能界にとっても、いないほうがいい」前田忠明が振り返る、芸能レポーターの「生きざま」
「ハッキリ言うけど、芸能レポーターなんて世の中にとっても芸能界にとっても、いないほうがいいんだから」 芸能ニュースを最前線で追いかけてきた、芸能レポーターという仕事。鬼沢慶一、梨元勝、須藤甚一郎、福岡翼がこの世を去った今、前田忠明(80)は昭和のワイドショー全盛期を知る“最後の芸能レポーター”となった。絶滅寸前の自身の職業を“悪”と称する男が語る。(文:岡野誠/撮影:殿村誠士/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
芸能レポーターの「誕生」は、半世紀近く前
「芸能レポーターって職業と言っていいのかどうかもわからないよ。誰も認めていないんだから。テレビ局の社史で1行も触れられてないでしょ? いらない存在なんですよ。私生活を暴くから、芸能人に嫌われて当然です。自宅前で離婚問題を聞かれてスプレーを吹きかける俳優もいたし、直撃に嫌気が差した有名人に『おまえらはクソにたかるハエだ!』と言われたこともあった。俺は黙っちゃったよ。そしたら、須藤甚一郎が『じゃあ、あんたはクソってこと?』と返してたけど」 いまや存亡の機にある芸能レポーターの起源は1975年末にさかのぼる。『アフタヌーンショー』(NET、現・テレビ朝日)が同年の芸能ニュースを振り返ると、高視聴率を獲得。翌年、番組は週刊誌『ヤングレディ』記者の梨元勝と契約し、タレントへの直撃取材を開始、“芸能レポーター”の呼称が生まれた。肩に担げるENGカメラが登場し、屋外で自由に動き回れる環境が整い始めた時代背景も大きかった。 「それまで芸能人のスキャンダルは週刊誌の専売特許で、ワイドショーはゲストで来たスターにプライベートな質問を少しする程度だった。それを梨元が変えた。やりすぎな面も多々あったよ。ただ、切り込み方はすごかった」 勝新太郎が『アフタヌーンショー』にゲスト出演した時、タレントが大麻所持で逮捕されたというニュースが飛び込んできた。勝は「遺憾だ。これだから芸能人は甘いと言われるんだ!」と激高した。程なくして、自身のアヘンの不法所持疑惑が発覚する。 「会見で、梨元は『テレビでけしからんと言ったばかりじゃないですか!』と突っ込んだ。感心したな。でも、勝さんは一枚上手だった。『ああ覚えてるよ。たしかに言ったけど、今は今だからな』と何食わぬ顔で答えていた(笑)。横山やすしが何か騒動を起こせば、梨元は大阪に飛んで、居場所を探り当てた。『ようきた。ワシは1番が好きなんや』と真っ先にインタビューを取っていた。勝さんがハワイでコカインと大麻所持で逮捕された時も、梨元は独占取材をした。大物の2人に認められていたね」