「世の中にとっても芸能界にとっても、いないほうがいい」前田忠明が振り返る、芸能レポーターの「生きざま」
アイドルのファンに石を投げられたことも
2000年代に入って以降、ワイドショーが芸能人に直撃する機会はほとんどなくなった。 「今のエンタメニュースは映画や舞台の宣伝、事務所の発表をそのまま流してるだけでしょ。横並びで面白くも何ともない。それじゃ視聴者も見ないから、事務所も結局損をしている。週刊誌やスポーツ紙の引用じゃなくて、自分の足で取材しないとダメですよ。当時は、直撃をエンターテインメントに変えるタレントもいた。丹波哲郎さんは隠し子が発覚した時、家に押しかけたレポーターに『君たちは遅い。近所の人はみんな知っている』と堂々と言っていましたよ。当時、丹波さんが謹慎するようなこともなかったですよ」 記者会見も激減した。現在は司会者の進行に沿って、当てられた記者が順に質問をしていく程度だ。1980年代は梨元、福岡、前田が矢継ぎ早に疑問をぶつけ、落ち着いてきたところで須藤が急所を突き、完全にレポーターのペースで勝手に進めていた。 「司会者はいたけど、当てられてから聞くなんてしないですよ。芸能レポーターという“悪人”が主役ですから。ただ、不倫や犯罪をしたタレントをバサッと切っても、骨だけは残そうという信念は持っていました。そうしないと、復帰できなくなる。今は、匿名のネットでよってたかって骨まで切るでしょ。書き込む一人ひとりにその意識はないんだろうけど」 もし前田が20代に戻れて就職活動をするとしたら、芸能レポーターを目指すか。 「やるわけないよ。精神的にも肉体的にもキツいしね。『これを聞いたらかわいそうだな……』と思っても質問せざるを得ない時もあるし、帰りに石を投げられてもしょうがないなと感じることもある。実際にアイドルのファンにぶつけられたこともあったけど(笑)。それでも、誰も認めてくれない職業があったっていいじゃないか、なんとか認知させようと意地で続けたんですよ。いろんな意味で、とんでもない仕事だけどね」