【高松宮記念回顧】マッドクールがナムラクレアとの壮絶な叩き合いを制す 血統表にはワージブの名前も
はね返された壁は必ず乗り越えてきたマッドクール
5年連続で重、不良で行われたスプリントGⅠ高松宮記念。今年のゴール前はひと際、感情を揺さぶられる熱いものがあった。昨年のスプリンターズSでハナ差敗れたマッドクールが先頭でゴール板を目指し、昨年の高松宮記念2着ナムラクレアが進路を切りかえてから再加速。2頭並んで飛び込んだゴール板。どちらも勝って昨年の雪辱を果たしたい。その執念たるや、これぞ競馬だと胸を張って伝えたい。2着では終われない。勝たなければ未来に名を残せない。すべてはそのためにある。 【高松宮記念2024 推奨馬】1200mは連対率100%、ミスプロ系は単回率163%で血統◎!外国馬の見解もあり SPAIA編集部の推奨馬を紹介(SPAIA) 最後のバトンを託された2人の騎手、その叱咤にこたえる2頭のサラブレッドの姿に、もはや自分の馬券など吹き飛ばされた。人は挑戦を諦めたとき、年老いていく。アントニオ猪木氏の言葉がよぎる。たゆまぬ挑戦の先のゴール板はできることなら2つあってほしかった。 最後はマッドクールがわずかアタマ差でしのぎ切った。2年前に未勝利戦から4連勝でオープン入り。このうち3勝が今回と同じ中京芝だった。重賞初挑戦は昨年のシルクロードS。連勝の勢いを評価され1番人気に支持されるも3着。1200mではじめて負けた。 その後、春雷Sを勝ち再浮上を狙うもCBC賞9着と壁にはね返された。それでも次走のスプリンターズSで2着と弾かれても必ず乗り越えてきた。香港では輸送で体を減らし8着。今回は挽回する番だった。馬体重は+18キロで、デビュー以来最高体重。香港の負けを引きずるどころか、それを糧にしていた。はね返されても壁を必ず乗り越える。これがマッドクールの魅力だろう。
令和に栄えるワージブの名
マッドクールの父はDark Angelで、血統表の奥にはワージブの名前がみえる。この馬名をみて、記憶を90年代に飛ばした方は年季の入った血統派といっていい。かつて藤沢和雄厩舎に所属し、1995年ラジオたんぱ賞を勝ったプレストシンボリの父がワージブだ。日本では枝葉を広げられなかったが、ワージブは欧州でその血脈を残していった。 英国スプリントGⅠ・2勝のロイヤルアプローズの孫がDark Angel。マッドクールの勝利によって、ワージブの血が日本に残る可能性が高くなった。プレストシンボリから約30年、かつて地味な存在だったワージブの日本での復興はマッドクールからはじまる。 そんな希望の光マッドクールを所有するサンデーレーシングはこの勝利でJRAのGⅠ完全制覇を達成した。99年阪神3歳牝馬S8着アルーリングアクトから24年4カ月での達成はあっという間のことともいえる。 Dark Angel産駒は現在、JRAに6頭の現役馬がいる。産駒の通算勝利25勝中15勝を1200mであげ、函館3、福島3、小倉4勝の小回り巧者でもある。小倉に強いように高速決着も苦にしない。マッドクールも条件戦時代に小倉で1:06.9を記録した。決して道悪専用ではない。決着時計に幅があるのはスプリントのチャンピオン級の証でもあり、まだまだ秋も主役をはるだろう。