【高松宮記念回顧】マッドクールがナムラクレアとの壮絶な叩き合いを制す 血統表にはワージブの名前も
収穫があった4着ウインカーネリアン
またも涙を飲んだナムラクレアは、これでスプリントGⅠで5、2、3、2着。本当にあと一歩が遠い。重馬場で記録した上がり3ハロンは33.2。これだけのパフォーマンスで勝てないのはなぜなのか。なんともいえない気分だ。最内が伸びる馬場で3番枠を引き、定石通り終始最内を通って抜けてきた。目標だったマッドクールが前にいて、切り返す場面でバランスを崩し、わずかに離されたのが結果につながったが、決して手筋に誤りはなかった。ゴール前の脚色は勝ち馬をしのぐものがあり、それだけに負けてしまったのが悔やまれてならない。 レースは前後半600m34.9-34.0。スプリントGⅠとしてはスローの後傾ラップだった。重馬場を差し引いても、流れは先行勢のもの。溜めて伸び、3着に入ったのはナムラクレアしかいない。 この流れを演出したのが香港のビクターザウィナーだ。抜群のダッシュ力で先行勢の機先を制した。ダッシュ力抜群との評判通り、最初の2ハロンで隊列を決めてしまった。前半からハイペースで流れにくい高松宮記念では、逃げ争いがレースの形を決める。今年もそんな競馬になった。ビクターザウィナーは4コーナーで外へ行ってしまい3着。慣れない左回りで勝手が違ったようで、惜しかった。最内を譲らない姿勢があれば、また違っていたのではないか。 そのビクターザウィナーを追いかけ、粘ったのが4着ウインカーネリアン。速くない逃げを利用しての好走ではあるが、7歳にして初の1200m出走、それもGⅠでこの結果は堂々たるもの。スピードを生かした競馬が身上だけに、1200mなら番手でも競馬ができそうだ。内枠絶対有利の状況下で、外を通って踏ん張ったのは大きい。もちろん、後半がわずかに速い流れだったからこそであり、ハイペースでどこまでついて来られるかは分からないが、試してみる価値はありそうだ。 最後に引退レースだったメイケイエールについて。これまでも回顧で何度となく取りあげ、色々な推理を巡らせてきた。前に馬がいると追いかける、両側に馬がいるとエキサイトするなど、どうすればいいのか。勝手に頭を悩ませた。というのも、能力を発揮したときの強さがケタ違いだったからであり、なんとなく気になって仕方ない存在だったからだ。あの強さを備えた産駒に会える日が楽しみだ。 ライタープロフィール 勝木 淳 競馬中心の文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。新刊『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。
勝木淳