「CVT」の終わりは日本車の始まり 2014年クルマ業界振り返り
「CVT」とはContinuously Variable Transmissionの頭文字で「無段階変速機」のこと。現在の国産車のオートマチック・トランスミッションのほとんどがこのCVTを採用している。名前の通り、ギアを切り替えて変速比を変えるマニュアル・トランスミッションを階段だとすれば、CVTは坂道の様に段がない。 【写真】軽自動車が「主役」だった2013年 クルマ業界振り返り 1980年代に次々と現れたCVTは、初期には発進に大きなショックを伴うなど、完成度は決して高いものではなかった。しかし、理論的には「エンジンの欠点を補う夢の次世代変速機」であることから多くの注目を集め、以来着実に地歩を固めてきた。燃費性能への注目の高まりにつれ、特にこの十年は効率の悪いトルコンATからCVTへのシフトが急速に進んだ。数年前にはトルコンATは旧技術の象徴の様に思われていたのだ。 ところがその構造が今変わろうとしている。CVTが滅亡するかどうかはまだ解らないが、CVTの限界が見え始め、同時にCVT以外の選択肢の芽が出始めているのである。後年振り返れば、2014年はCVTにとって終わりの始まりだったのかもしれない。
夢の変速機だったCVT
まずはCVTの仕組みから説明を始めよう。CVTには様々なタイプがあるが、ハイブリッドに使われているものを除けば、そのほとんどがベルト式だ。ふたつのプーリーの間にベルトを掛ける。プーリーはベルトがかかる谷間がV字構造になっており、油圧でV字の谷間を狭めたり広げたりできる。するとベルトの掛る位置が変わり有効径が変わる。回す側と回される側両方のプーリーの有効径を変えることでふたつのプーリーの回転速度を変えて変速する仕組みだ。 エンジンという機械はその特性として、アイドリングからレッドゾーンまで同じ特性ではない。回転数によって性能の優れたところと悪いところがある。しかもその良い悪いは例えば燃費についてなのかパワーについてなのかでまた回転数が違うという機械なのだ。 CVTの場合、従来の変速機の様な有段変速ではないので、エンジン回転数と車速の関係が飛躍的に自由だ。理論的には走行している間中エンジンを「燃費効率が一番良い回転数」ぴったりに固定したまま速度を自由に変えたり、発進から最高速まで一番トルクが出ているところに固定して最大加速力を保つことができる可能性があるのだ。 他にも、サイズが小さいこと、連続可変のため変速ショックが構造上あり得ないことなどメリットは多い。また変速は電子制御されるので、プログラムによる燃費テスト向けのチューニングがしやすく、カタログ上のメーカー発表燃費を上げるのにも都合が良い。そんなわけで燃費記録を叩きだすソリューションとして定番化したのだ。 しかし、机上論はともかく、現実はそんなに甘くない。CVTにも問題点がある。