「CVT」の終わりは日本車の始まり 2014年クルマ業界振り返り
CVTはエンジンパワーをロスする
先ほどCVTの構造を説明した時、ふたつのプーリーとベルトの関係を頭に描いたと思うが、おそらく多くの方は、自転車の様にチカラを出す側のプーリーがベルトを引っ張り、受ける側のプーリーがそれで引っ張られて回転することをイメージしたと思う。しかし、スクーター程度の負荷ならともかく、クルマの重量と出力ではベルトを引っ張りで使うのが強度的に難しく、その結果、金属ベルトに将棋のコマのような形状の金属片を多数通して押し側で動力を伝える仕組みになっている。 5円玉を紐に通して棒にした状態を考えてもらうと解りやすいだろう。これなら押し側で動力伝達する限り金属棒と同じなので大きな力が掛っても平気だ。その代わり力が掛れば掛る程ベルトがプーリーに食い込む引っ張りと違って、押し側だと摩擦による力の伝達にはツライ状態になる。 しかも回転すれば金属ベルトとコマは擦れるため、潤滑をしないとベルトが摩耗して切れてしまう。そこでベルトを潤滑油漬けにするのだが、前述の通りプーリーとコマの間は摩擦力で力を伝えているので、ベルトを油漬けにすれば当然滑る。滑らないためにはひたすら挟みこみ圧力を強く掛けるしかない。 ということでCVTは動作中ずっと高圧の油圧ポンプの作動を余儀なくされるのだ。この油圧ポンプはエンジン駆動なので当然エンジンのパワーをロスする。パワーロスは速度域にもよるが、ほぼエアコンと同程度だという。 効率向上のための変速機なのに仕組み上パワーロスを避けられないというのは自己矛盾だ。しかも高速になるほど滑りを止めるために油圧を高めなくてはならないのでロスが増える。 もう一点、最少ギア比と最大ギア比の差を大きく取れないという構造的問題点もある。1速のギア比は車重とエンジンの性能で自動的に決まるので妥協の余地がない。となれば妥協するのは高速側だ。その結果CVTを使うと高速巡航中にエンジン回転が高くなりがちになる。前述のパワーロスの問題と合わせて、CVTは街中を走るモードでは燃費にプラスだが、高速燃費は宿命的に苦手なのだ。 国土交通省の定める燃費試験はほとんどが低速しか使わない。そのため低速を得意とするCVTは試験では低燃費を達成しやすいのだが、クルマを買ったユーザーが高速走行をするとこれまで書いてきたような理由でカタログ値と乖離した燃費になりやすい。