話題の宿根草ガーデンを手掛けるガーデナーが、影響を受けた英国の庭とは
園芸好きの間で話題の、神奈川県愛川町の服部牧場にある宿根草ガーデン。初夏を迎え、花や葉は色がいっそう鮮やか。高さを競うように背を伸ばし、見上げるほどになる草花も。植物たちのエネルギーが感じられる野趣あふれる景観です。『趣味の園芸』で連載中の「日本一美しい 牧場の宿根草ガーデン」、7月号より一部を抜粋してお届け。
第4回 影響を受けたガーデナー
牧場ガーデンをつくるにあたり、ガーデナーの平栗智子さんは、洋書やイギリスの園芸誌で気に入った写真があると付箋をつけてイメージをふくらませていったそう。でも、実際にどんな庭にするかなかなか決められず、一度イギリスの庭を見に行こう!と2015年の初夏、渡英することに。 「当初ガーデンの予定地は放牧地の近くだったんですが、馬や牛たちがいる牧草地を背景にしたガーデンがまったく想像できませんでした。牧場の社長はイギリスがお好きですし、ベス・チャトーさんやピート・アウドルフ*さんなど、私がお気に入りのガーデンもあるし......とにかくイギリスに行けば何かヒントがあるのではないかと思ったんです」 *ベス・チャトー(1923―2018)はイギリス屈指のガーデナーで、世界一のプランツ・ウーマンと呼ばれた。ピート・アウドルフ(1944―)はオランダ生まれのガーデンデザイナーで、野趣に富む独特の植栽で注目されている。 到着翌日に訪れたのはエセックス州にあるベス・チャトー・ガーデン。荒れ地を四季折々に美しい庭にしたことで知られ、冬もクローズせず立ち枯れた姿も見せ、通年オープン。グラベルガーデン(砂利の庭)、ウォーターガーデンなど、複数の庭で構成され、土の状態や日当たり具合を見極め、植物の性質を研究して植栽されている。 「私の場合は同じ種でも入手できる品種はとにかく全部植えて、どう育つか自分で確かめているのですが、個々の植物についてよく調べることはベス・チャトーさんの影響でしょうか」 サマセット州にあるピート・アウドルフさんデザインの庭、ハウザー&ワース・サマセットは宿根草主体のガーデン。個々の植物はもちろん、季節の移ろいが美しい景観で注目されている。 「入った瞬間に涙が出るくらい感動し、時を忘れて立ちつくしてしまい、何時間も過ごしました。『つくりたいのはこんな景観の庭!』と思いました。シンボルツリーはいらない! 宿根草と球根植物だけで勝負しよう!と。この庭はまわりが牧草地か農地のようで、立地がちょっと服部牧場に似ていたんです」 平栗さんが影響を受けたのはこの二人だけではないが、牧場ガーデンを訪れるたびに日本にいることを忘れるような感覚になるのは、英国の庭のエッセンスが息づいているからかもしれない。 7月号では平栗さんが選んだすてきな宿根草を紹介しています。ナチュラリスティックに移り変わる四季折々の宿根草と庭づくりのヒントを、テキストでお楽しみください。 ●連載「日本一美しい 牧場の宿根草ガーデン」 神奈川県・服部牧場のガーデン。ナチュラリスティックに移り変わる四季折々の宿根草と庭づくりのヒントを、ガーデナーの平栗智子さんに案内していただきます。 平栗智子(ひらくり・ともこ) ガーデナー 園芸店でサンプルガーデンや宿根草の仕入れを担当し、ガーデンボランティアで経験を積む。2015年秋から神奈川県愛川町にある服部牧場内の宿根草ガーデンのデザインや管理を手がけている。 服部牧場(神奈川県愛甲郡愛川町半原6087) *牧場は入場無料。 『趣味の園芸』2024年7月号 日本一美しい 牧場の宿根草ガーデン「第4回 影響を受けたガーデナー」より