なぜ日本のまちからごみ箱が消えた? IoTを活用したごみ箱「SmaGO」の広がりに期待
5倍量をためられるスマートごみ箱で、海洋ごみ問題にもアプローチ
――では、「SmaGO」についてお伺いしていきたいと思いますが、フォーステックがこのような事業を始めたきっかけはなんでしょうか? 柏村:前述したようなごみ箱に関する負のスパイラルを、テクノロジーで解消したいという思いと、貴重な海洋資源を後世に誇れるものとして継承したいという思いがきっかけです。 弊社の代表である竹村はずっとマリンスポーツをやっていたため、海岸清掃を行うことも多く、海洋ごみ問題に大きな課題を感じていて、自身の子どもに対してもきれいな海を継承したいという思いも強かったようです。 ――海洋ごみへの問題意識から、まちの中のごみ箱設置に取り組み始めたのですね。 柏村:はい。海洋ごみは人間の生活圏であるまちから流れてくるものが8割を占めています。そして海洋プラスチックごみがどんどん増えており、2050年くらいには魚や魚類よりも海洋プラスチックが多くなるという予想もされています。 「SmaGO」を通じて、まちの中でごみが正しく集まり、分別もされて、適切な費用で処分ができる状態を実現できれば、皆さんの不便も解消できる上、海洋ごみ問題の解決、資源の循環につながります。社会的に大変意義のある事業として取り組んでいます。 ――自治体が「SmaGO」を導入した場合、一般的なごみ箱と比べてどのくらいのコスト削減が可能になるのでしょうか? 柏村:ごみ箱を設置する数やごみの回収頻度などによって変わってはくるのですが、先に説明した地方観光都市の例でいうと、5年間の運営費用が3分の1程度となると考えていただけるといいと思います。 ――実際に導入した自治体や企業からは、どんな声が届いていますか? 柏村:自治体などからは、「ポイ捨てが7、8割は減った」「ごみの散乱がなくなった」「ごみ箱がなかった時は地域清掃活動や毎朝の店前の清掃にかなりの時間を使っていたが、その頻度も時間も減らせた」という声が届いています。 例えば東京の表参道にある商店街・原宿表参道欅(けやき)会では、4年ほど運用いただいていますが、1日に3~4回行っていた回収が、1日に1回、夏場はペットボトルだけ1日2回に減らせています。 また、表参道の「スマートアクション・プロジェクト」では、「環境配慮型のサステナビリティとDE&Iを同時に実現する社会実験にチャレンジする」というアプローチで、日本特殊陶業様に昨年からご支援いただいております。 そのラッピングデザインは、「異彩を、放て。」をミッションに掲げ、国内外の主に知的障害のある作家の描く2,000点以上のアートデータのライセンスを管理し、さまざまなビジネスへ展開するヘラルボニー社にご協力いただいております。持続可能な社会づくりへの貢献はもちろんのこと、ごみをきちんとごみ箱に捨てたくなるような、華やかなラッピングデザインがまちを彩ります。 企業によるこうしたご協賛は、まちのクリーン活動への貢献はもちろんのこと、話題性や関心の喚起にもつながります。 表参道のプロジェクトの場合、「アート」という要素が加わることで、アート作品が目を引きプロジェクトや作家に興味を持つ、なぜその企業が協賛しているのか関心を持つなど、複層的に興味関心を高めることができます。 また、美しいアートが施されていることで、ごみ箱=汚いというイメージ自体も払拭してくれます。つい先日は、「SmaGO」の上でパソコンを広げる若者を目にしたのですが、ごみ箱が自然にまちに溶け込むこのような光景が、より多く見受けられるようになったらうれしいですね。