〈健康診断〉大腸がんだけじゃない?【便潜血検査】でわかる病気とは|医師が詳しく解説
便に血液が混ざっていないか検査するのが便潜血検査です。 便潜血検査は、便に潜む血液成分があるかどうかを調査する検査であり、いわゆる検便を行う必要があります。 実際に、自分で便の表面をスティックで採取し、保存液に検体を浸した状態で提出することが求められます。 連続する2日分にかけて提出を必要とする検査手段であり、赤血球中のヘモグロビンを便検体から検出できるのが便潜血検査の長所です。 検査自体に強い痛みを伴わずに、時間も大してかからず、食事制限をする必要もないので、検診する上で負担が少ない点がメリットと言えます。 その一方で、早期のがん病変の場合は平坦な所見を呈することが多く見受けられるため、悪性病巣部があっても陰性になる可能性が指摘されています。 また、小腸部分にがん病変部を認める際には、柔らかい便が病変部を通過する際に出血を引き起こさないがゆえに本来陽性所見であっても陰性として判定されるケースが稀にあります。 便潜血検査にて微量の血液が混じり陽性と検出されるのは、大腸がんを始めとする悪性疾患のみならず、潰瘍性病変や痔核などでも認められることがあり、実際に陽性と判定されたケースでも、治療の必要性が乏しい病変である可能性も考えられます。 2日のうち1度でも、検査結果が陽性になった場合には大腸内視鏡などでさらに詳しく検査します。 陽性を認められなくても、遺伝的要素のある方や必要とみなされた方にはさらに精密な検査を行います。 精密検査としては、大腸CT検査や大腸カプセル内視鏡検査などの検査方法がありますが、実際に組織を採取する場合には大腸内視鏡での検査が必要です。 〈写真〉大腸がんだけじゃない?【便潜血検査】でわかる病気とは ■便潜血検査でわかる病気とは? 便潜血検査でわかる病気として、大腸がんや大腸ポリープが挙げられます。 大腸ポリープという病気は、日本ではこの20年間で増加の一途をたどっており、おおむね40歳代ごろから罹患率が増加し始めて、年齢が上がるにつれて発症しやすくなる疾患と考えられています。 主に、日常生活における脂肪分の摂り過ぎや食物繊維の不足などの要因が大腸ポリープの発症リスク因子と認識されています。 大腸ポリープが大きくなると、がんになる場合もあるため、大腸がんを事前に予防するためには、便潜血反応検査や大腸内視鏡検査を確実に受けて、早期的にがん化するリスクのあるポリープを切除することが重要です。 大腸がんや大腸ポリープは、40歳代から徐々に罹患率が増え始めて年齢を重ねるにつれて発症リスクも上昇するため、市区町村などの各自治体では40歳以上の方に対して便潜血検査が広く実施されています。 大腸がんによる死亡率を減少させることが科学的に実証された検診方法のひとつに「便潜血検査」が挙げられます。 この検査では、二日分に渡って自分の便を検体として採取して、便に血液が混入されているかどうかを検出する方法となります。 大腸がんなど悪性腫瘍やポリープなどの病変が存在すると大腸内に出血所見を呈することがあり、その血液成分が検出されることで便潜血の陽性反応が認められます。 ただし、初期の大腸がんの場合には、出血をきたさないこともあるため、便潜血検査だけでは病変が見過ごされることもあり、一定の注意を払う必要があります。 大腸ポリープを発見するために行われる最初の検査としては、便潜血検査があって、この検査では便に血液が混じっているかどうかを調べて、万が一陽性の場合は、精密検査として大腸内視鏡検査などが実施される運びとなります。 大腸ポリープは、サイズが大きい病変や出血する危険性が高いもの以外は、基本的には外来レベルで大腸内視鏡検査を実施して、病巣部を切除して検体を検査に提出します。 切除した大腸ポリープは、病理組織学的な診断を行い、がん細胞の有無やがんが血管やリンパ管に侵入しているか、どの深さまで深達しているかなどを正確に判定します。 ■まとめ 大腸がんや大腸ポリープの罹患者数は食生活の欧米化が進むにつれて年々増加していますが、これらの病気は健康診断などの機会に早期的に発見して治療対応すれば治癒が可能な疾患です。 大腸がん検診を含めて、大腸スクリーニング検査があることを知って、心配な人は一度地域の自治体などを通して便潜血反応検査など一次検診を受けるようにしましょう。 便潜血反応検査結果に基づいて、消化器内科など専門医療機関の担当医と相談しながら大腸内視鏡検査など精密検査の実際の方法やリスクアンドベネフィットを共有して、確実に病変部を指摘できるように努めてください。 文/甲斐沼孟(医師)
甲斐沼 孟