G20サミット開幕、中国が存在感発揮へ トランプ氏復帰で議論に影
Lisandra Paraguassu Anthony Boadle [リオデジャネイロ 18日 ロイター] - 20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)が18日、ブラジル南東部リオデジャネイロで2日間の日程で開幕した。トランプ氏の米大統領復帰で米政府の政策ひいては世界秩序が大きく転換すると予測される中、貿易や気候変動、世界の安全保障に関し議論が交わされることになる。 ブラジルのルラ大統領は開幕演説で、気候変動の壊滅的な影響は世界中で見られるとし、地球温暖化と貧困に取り組むために各国の指導者らに行動を求めた。自身も貧困家庭に生まれたルラ氏は、「飢餓と貧困は物資不足や自然現象の結果ではなく政治的決定の産物だ」と述べた。 パレスチナ自治区ガザやウクライナの戦争が続く中で地政学的緊張に揺れるG20サミットでは、レームダック状態のバイデン米大統領に代わり、中国の習近平国家主席が中心的な役割を果たす見通し。 ドイツ政府関係者は「懸念材料は地政学だけでなく、中国が多くの問題において経済や金融面で顕著な役割を果たしていることだ」と語った。 中国はウクライナ問題でロシアの側に立ってきたが、ロシアが北朝鮮兵をウクライナ戦線に派遣したことで紛争が「グローバル化」し、「中国の身近」に迫ったため、中国がその立場を維持するのが難しくなるとドイツは考えている、と別の当局者は語った。 共同声明の作成に当たっている各国の外交担当は、ウクライナの戦況悪化に関して、特定国を批判することなく平和を求めるという漠然とした文言にでさえ合意をまとめるのに苦戦している。 ロシア軍が17日に実施したウクライナへの大規模な空爆を受け、欧州の外交官たちは世界の紛争に関する従来の文言の見直しを求めており、薄氷の合意が揺らいだ。米国はこの攻撃に対し、ウクライナが米国製兵器を使用してロシア領内を攻撃することを許可した。 一方、ブラジル政府高官は持続可能な開発、富裕層への課税、貧困・飢餓対策を中心とする今回の議題が、トランプ政権発足後すぐに勢いを失う可能性があると認識している。 ブラジル財務省筋は「トランプ大統領は多国間主義の価値を認めていない。トランプ政権がこうした問題に関与したり関心を示す可能性はあまりない」との見方を示した。 習主席は、中国が経済的に存在感を増す中、巨大経済圏構想「一帯一路」を誇示するとみられる。ブラジルは今のところ一帯一路への参加を見送っているが、習氏が20日に首都ブラジリアを公式訪問する際には両国の産業パートナーシップが打ち出されるとの期待が高い。 G20の貿易を巡る討議は、トランプ政権発足で米中貿易戦争が激化するとの懸念が影を落とすとみられる。 ルラ大統領が推し進める富裕層への課税も、トランプ氏が公約する国内の減税が議論の妨げとなりそうだ。 トランプ氏の新たな中南米の同盟相手、アルゼンチンのミレイ大統領は既に富裕層への課税を許容しない考えを示しており、同国の交渉担当者は共同声明で言及することに反対しているという。