「日本はオワコンなんて大ウソ」抗老化医学の先端を走る医師が「この国の未来は明るい」と断言する深いワケ
若返りとは「老化速度を遅くする」ことでも実現できる。それは、できそうですよね?
これらを受け入れるとしたら、もう一つ大切なのがどう後ろ側へエンドポイントを動かすか。それが「老化速度を遅くする」ということなのだと続けます。 「認知症、脳卒中、がん、僕らが恐れる病のほとんどは『老化疾患』です。。30歳以前の病気には遺伝的な要素もありますが、それ以降はそれまでの蓄積が関係します。同窓会に行くと、同じ50歳でもすごく若く見える人と、すでに老人になっている人がいますよね。それをよくよく調べてみたら、家系的に長生きや元気な人もいるけれど、後天的な影響、つまり『エピジェネティクス』に影響を受けていそうだなというのがわかってきました。『エピジェネティクス』は『生物学的年齢』という言葉に置き換えることもできます。遺伝子が同じ一卵性双生児であっても、40、50、60歳と年を重ねると環境因子の影響を受けて老化速度に差が出てくるのです」 例えばですが、紫外線、運動不足、暴飲暴食、睡眠時間が少ない、大きなストレスがかかった、などの人は老けて見え、また老けて見える人は血液検査の結果でも年を取った数値が出るのだそう。双子であっても同じ結果になるため、後天的な因子で加齢が起きてるとわかるのだそうです。ここまでが、この3年ほどで急激に進歩した「若返り研究」の概要です。 「2021年ごろ、ネズミの研究で、加齢を止めるだけでなく、実際に若返りを起こすことも可能だということがわかってきました。ヒトに応用するにはまだ10年から30年かかりますが、少なくとも運動・栄養・精神的な影響までは判明しているので、老化を遅くすることはできそうです」 山田先生は、月面探査コンテストなどで知られるXプライズ財団の「10年若返らせることができたら賞金1億ドル(150億円超)」という国際コンペに日本からのチームを送り出す活動もしています。このコンペでは筋肉・認知・老化の3つの老化速度を2030年までに10年遅らせることがゴールです。 「60歳からスタート、20年後の80歳のとき、生物学的年齢が70歳ならば老化速度が半分に抑えられ、10歳若くなっていると解釈できます。この競争が始まったため、科学者・医学者が一斉に『生物学的年齢で世界を捉える考え方もありだな』とスタンダードを変えたのがこの3年です。生まれてから何日経過したかの『暦年齢』を見ずにその人の年齢を算出しましょうというのが『エピジェネティック・クロック』、つまり『生物学的年齢』の考え方。これには『DNAのメチル化』というキーワードが深く関与しています」 ここまでの前編記事では「生物学的年齢」という尺度が必要になる理由を伺いました。つづく【後編】では「その尺度を使うと日本がとたんに宝の山になる」理由をお聞かせいただきます。
オトナサローネ編集部 井一美穂