【毎日書評】腹をくくれ。動く大地=日本に住む、私たちが大震災に備えるべき「リスクヘッジ」
いまこそ私たちに必要な「発想の転換」
能登半島地震のあとには、深刻なインフラの遅れについて多くの報道がなされました。それらは私たちに、環境の脆弱性を実感させることにもなったのではないでしょうか。だからこそ、いまの私たちに必要なのは、これまで当たり前だと思っていた考え方を改めてチェックし、不合理なものは思い切ってやめる「発想の転換」だと著者は述べています。 そうした際に役立つキーワードとして「地球科学的フロー」を提案したいと思います。欲望の肥大による無駄な消費を促す資本主義のフローではなく、地球環境にとっても、また人間の体にとっても適切なフローです。(241ページより) 著者によれば現在の日本社会は、エネルギー問題に関して間違った選択をし始めているのだそうです。つまり、自分たちの生活を変えることなく、同じだけのエネルギーをどこか別の場所に要求しているということ。それは右肩上がりをひたすら維持しようとする考え方の表れであり、そんなことを続けていたところで問題はなにも解決しないわけです。 昨今は自然・再生エネルギーへの転換が強調されますが、実際には、自然・再生エネルギーが使えるようになるまでには、別の膨大なエネルギーが必要となるもの。もちろんそれは、エコカーの代表となっている電気自動車についても同じです。もし脱石油、脱ガソリンを極端に徹底しようとしたら、蓄電池を用意するために莫大な資源とエネルギーが消費されるのです。 たとえば、巨大な風車をつくるために必要なエネルギーを考えたことはありますか。また、太陽電池をつくるために、どれほどのエネルギーがいるでしょう。さらに、風車が耐用年数を過ぎて処分されるときのエネルギーも考えなければなりません。 地熱発電でも、地下から熱水を汲み出す坑井(井戸)は、時間とともに詰まっていくため、新たに幾つも掘り続けなければならないのです。 社会が全体で消費する資源とエネルギーの総量を減らさなければ、本当の解決にはなりません。(242ページより) いいかえるなら、目先だけを部分的に改善しようとしてもだめだということ。結局のところ、高エネルギー消費を前提とした現代人の生活態度を変えないのであれば、根本的には問題の先送りにしかならないのです。(240ページより)