開業5周年を記念した【アマン京都】のスペシャル企画「鷹峯茶会」で非日常の世界へトリップ
緩急あるコースの締めは魅惑のデザート
強肴は胡麻豆腐の揚げ出し、焼物はのど黒幽暗杉板焼きと続きます。ふっくらと焼き上げられたのど黒には醤油と杉の香りがふわりと広がります。「初めて日本に来られた方にもおいしいと思ってもらえるよう作っています」と高木総料理長。 もうひとつの焼物、丹波平井牛のつけ焼は、とろけるような食感と脂の甘み、絶妙な火入れにうなる一皿。
趣深い茶会のフィナーレを飾るのは?
そして、焚合の蓮蒸。ほっこりした蓮根の甘みと出汁の味わいに癒される、あ、カニも……と食べ進んでいたら、ピータンという意外な食材に驚きます。王道がしっかりベースにあるからこそ、こうした革新的な試みでコースに変化をつけ、ゲストを惹きつけるのが高木総料理長の手腕なのでしょう。 締めははらすご飯。出汁で艶やかに炊き上げたご飯と脂ののったはらすの相性のよいこと。仕上げに添えられた山わさびもいいアクセントに。料理に合わせて供されたアルコールのペアリングは、シャンパン、白ワイン、日本酒、赤ワイン。いずれも料理の味を引き立て、響き合い、より深みへと誘ってくれるもので、口福度を引き上げてくれました。 懐石料理のラストには、エグゼクティブペストリーシェフ 松尾浩幸氏による甘味が登場。お重の中にはなんとも美しい秋の景色。丹波栗の甘みと宇治ほうじ茶の香りがマッチしたきんつば、柿ムースを白餡の練り切りで包んだ和洋融合の一品、カウンターで表面をキャラメリゼして仕上げたスイートポテト、アマン京都の山椒と北山杉の新芽を忍ばせたガナッシュチョコレート。それぞれ見惚れるほど愛らしいだけでなく、素材の持ち味を活かした風味にもうっとりです。
茶を香るという新エクスペリエンス
懐石料理と甘味を堪能した後は、竹や麻、藁など自然素材で囲われたカウンター後ろの畳敷へ移動。ここでは新たなエクスペリエンス「茶香」体験が待っていました。ゲストの中央に置かれたのは、水たばこの原理を応用し、茶葉を吸うために特別にあつらえたオリジナルのお道具「煙小卓」。まず、炭をおこして茶葉を熱します。そして、竹製のパイプを深く吸い込むと、気化され、和らいだ茶の香りを鼻腔で感じ、茶味を身体全身で深く味わうというもの。初めての体験にドキドキしながら、パイプを深く吸い込み、煙を吐き出してみると、少し香ばしいような芳しいお茶の香りが鼻腔から抜けていくのを感じます。飲むのとはまた違ったお茶の味わいと、深い呼吸で、気持ちが落ち着いていくような瞑想にも似た感覚を味わえました。まさに新感覚の体験です。 このエクスペリエンスは京都を拠点とするアートコレクティブ Ochill(オチル)によるもの。宿泊ゲスト限定の体験で、本来は、西陣にある陰翳礼讃の世界を思わせる京町家の瞑想室「落散 京都」での体験となるそうです。 色とりどりに染まり始める森の庭で、極上の秋に浸り、新しい体験に刺激を受けた1日となりました。さらに、来年の秋には、敷地内でもっとも静かなエリアに新しく茶室が誕生するというアマン京都。伝統文化や日本の精神性に触れるエクスペリエンスがさらに拡がりそうで、楽しみです。 アマン京都 所在地 京都市北区大北山鷲峯町1番 電話番号 075-496-1333
小長谷奈都子