「自分の仕事は簡単に替えがきくものではない」ーー「通常営業」を続ける小さな整骨院の自負と葛藤【#コロナとどう暮らす】
横のつながりで生きる
緊急事態宣言の解除後も東京都の感染者数が底を打つことはなく、今月2日に「東京アラート」が発動された(11日に解除)。 週末の吉祥寺は多くの人出で賑わい、それが「危機感不足」と批判の的になる。だが、島本さんは、「人出は確実に減っています」と話す。 「吉祥寺は『若者の街の代表』のような言われ方をしますけど、実際は他の街と何ら変わりません。普通の生活圏で、中年、高齢者も多く暮らしていますから」 町内会の青年部の一員でもある島本さんは、近隣を回って現状把握と情報収集に努めている。そこで見えてきたのは、飲食店の窮状だった。 「昼のテイクアウトを始めた店も多いんですけど、黒字を出すためではなく、少しでも赤字を減らすためにやっていると聞きました」 食べ歩きブログを運営し、食道楽としても知られる島本さんは「少しでも吉祥寺の飲食店に貢献したい」と、毎日昼食をテイクアウトする。出費はかさむが、島本さんは「こういうときしかできないことだから、むしろ楽しいですよ」と笑う。 本町はりきゅう整骨院の待合室には、飲食店を中心に30店以上のショップカードがズラリと並ぶ。なかにはテイクアウトのメニュー表まであり、整骨院であることを忘れさせるほどだ。取材当日には患者からオススメの店を聞かれた島本さんが、「あそこのスイーツは奥さんへのお土産にピッタリですよ」と答える場面もあった。
「逆に飲食店がお客さんに僕の院を紹介してくれることもありますから。お互いに宣伝し合って、流れを止めないことを意識しています。どれだけSNSがはやっていても、やっぱりローカルの口コミが一番人の流れを生みますから」 アルコール消毒液が不足して島本さんが入手できず困っていると、飲食店で働く患者が分けてくれたこともあった。コロナ禍以前から互いの顔と顔を突き合わせ、交流してきた近隣商店との横の連帯が、「withコロナ」の社会でも生き抜く原動力になっている。 いまだ平常に戻ったとはいえない。それでも、島本さんはできる限り「普段通り」に近づけていきたいと言う。 「リスクと付き合うには、もちろん情報が必要です。メディアだけに頼るのではなく、周りの横のつながりも駆使してコロナや補償制度の情報を集めることが大事だと思っています。でも、基本的にはコロナの存在を感じながらも、なるべく普段通りの生活をしたいと考えています」 今日も本町はりきゅう整骨院の入り口には「只今元気に診療中」の札が、いつもと同じように下がっている。
--- 菊地高弘(きくち・たかひろ) 1982年生まれ、東京都育ち。野球専門誌「野球太郎」編集部員を経て、フリーの編集者兼ライターに。近著に高校野球の越境入学生をテーマにした『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! ~野球留学生ものがたり』(インプレス)がある。 ※この記事はYahoo!ニュースに寄せられた不安の声をヒント(参考)に作成しました。コメント欄に、さらに知りたいことや専門家に聞いてみたいことなどがあればぜひお書きください。次の記事作成のヒントにさせていただきます。