「自分の仕事は簡単に替えがきくものではない」ーー「通常営業」を続ける小さな整骨院の自負と葛藤【#コロナとどう暮らす】
客数減の影響はこれから
島本さんとともに院で働くあん摩マッサージ指圧師の赤羽英さん(32)には、こんな不安があったという。 「通常通り院を開けることは、本音を言えば不安もありました。『自粛せずにやってるのか!』と批判されるんじゃないかと心配で。近所の営業している飲食店に『営業するな』と張り紙をされたという話も聞きました」 整骨院が「エッセンシャル・ワーク」といっても、都の休業要請の対象外とは知らず、誤解する人がいるかもしれない。赤羽さんはそれを恐れた。 今のところ批判を浴びることはなく、むしろ患者から院が開いているか問い合わせの電話がかかってくる。「普段通りやってるんだ」と驚かれ、歓迎されるという。 整骨院は患者の身体に触れるだけに、濃厚接触のリスクが高まる。とはいえ補償なく仕事を休んでは、島本さんのような個人ではたちまち経営に行き詰まる。 本町はりきゅう整骨院の場合は、島本さんが「非常時の備えとして積立式の保険に入っていて、それも今のところなんとか切り崩さずに持っている」と語るように、経営危機の一歩手前で踏みとどまっている。だが、業界全体を見渡すと、より苦しい状況が見えてくる。 「柔道整復師の苦しい状況はまだ国に届いているとは言えないのが現状です」 そう語るのは、島本さんらが加入する接骨院・整骨院の統括団体・JB日本接骨師会の安部直人さん(30)。 柔道整復師の数は日本全国で7万人を超え、100を超える統括団体がある。そのうちの一つ、JB日本接骨師会に所属する柔道整復師は1080人。そのうち、コロナ禍を受けて廃業を決めたのは4人だという。
現状では柔道整復師の間でコロナによる被害は目立っていないものの、安部さんはこう警鐘を鳴らす。 「(健康)保険料が各院に入るのは3カ月後というシステム(保険組合によって異なる)で、緊急事態宣言中の請求分はこれからの入金になります。患者数が減り、どうしても入金額は少なくなるので、経営の悪化する院が増えると予想しています」 この件には、島本さんも「資金繰りが一気に変わるのは夏過ぎだと思います」と危機感を強める。 JB日本接骨師会は、全会員から徴収する月会費1万2000円の1年間免除など緊急対策をとった。さらに1施術所あたり15万円の一時金給付と、12カ月間無利息・返済期間3年間の運営資金融資(最大500万円)の実施を求めて、厚生労働省、経済産業省、各都道府県知事に要望書を提出する予定だ。