「自分の仕事は簡単に替えがきくものではない」ーー「通常営業」を続ける小さな整骨院の自負と葛藤【#コロナとどう暮らす】
緊急事態宣言下では、レストランなど多くのお店が自粛要請のもと休業せざるを得なかった。一方で、そのまま営業を認められた施設・仕事もある。社会活動の持続のために必要な仕事・業務で、「エッセンシャル・ワーク」と呼ぶ。整骨院もそのひとつだ。東京都武蔵野市にある小さな整骨院から、エッセンシャル・ワーカーとしての意義、コロナとともに働いていく姿を考える。(ライター:菊地高弘/撮影:菊地健志/Yahoo!ニュース 特集編集部)
今も患者の数はほぼ半減
JR吉祥寺駅を降りて北口のバスロータリーを抜けると、「サンロード」と呼ばれるアーケード街が北に延びている。平時の休日には大勢の人でごった返す喧騒から、脇道を数分も歩けば静かな住宅地が広がる。細い路地に隠れるようにして立つ「本町はりきゅう整骨院」の扉には、「只今元気に診療中」の札が下がっている。 「緊急事態宣言が解除されて、もうちょっと戻るかと思ったんですけどね。全然変わらなかったですね」 院長の島本篤さん(40)はそう言って苦笑した。新型コロナウイルスの感染拡大によって、患者の数は平時の5~6割程度に減っている。とくに減っているのは「仕事帰りの会社員」だという。「家族に止められていて、行きたくても行けない」という高齢患者の声も島本さんは耳にしている。 間仕切りのカーテンに覆われたベッド3台を配した、約30平米の小さな整骨院。2010年3月に開院し、10周年を迎えたばかりのタイミングでコロナ禍に見舞われた。 「2011年の東日本大震災のほうが、患者が一気に減ってきつかったです。当時は開院したばかりで借金もあったし、『夜中のバイトでもしようか』と思いましたから」 島本さんはそう言って、笑った。 整骨院とは、「接骨院」「骨つぎ」とも称され、柔道整復師の国家資格を持つ者が施術する施設である。おもに骨折、脱臼、捻挫、打撲、挫傷(肉離れ)の治療にあたり、病院と同様に健康保険が適用される。マッサージ店と混同されることもあるが、本来は治療の場所である。