「萌えキャラ」ポスターは女性蔑視?何が問題だったのか
「何が性的な表現か、ということについては個人差があるが、不特定多数の人がみる公的空間に掲示する際は、見る人の感性の幅を想定して内容を考える必要があった。『碧志摩メグ』については、胸を強調するイラストや座っているポーズが淫靡なものを想像させ、『のうりん』のポスターについても胸が強調され、構図が男性にとって都合の良いような、性的に媚びたような表現と感じさせる」 佐倉さんは「社会では物事を動かす人が男性視点である場合があり、女性からするとそういう視点に釈然としない思いを抱える。アニメの創作にも、ときに男性視点という問題が出てくる」として、あらゆる制作現場の人は視点が偏っていないかを常に注意する必要があると話す。
「萌えキャラ」自体が「女性蔑視」なのではない
一方で、佐倉さんは「萌えキャラ」や「オタク文化」自体が女性蔑視につながるものではないとして、アニメ的な表現を一括りにして攻撃する行為を「短絡的だ」と批判する。 「アニメの表現が常にフェミニズムの立場から見て問題ということではなく、むしろ評価できる点もある。当然とされているような『男女』の枠組みや、異性愛が当然だという考えを覆すような表現があるのもまた、アニメだからだ。例えば、女性主人公が男性キャラの補助やケアをする役割を与えられるのではなく、主体的に行動しながら女性同士の関係性を深く育んでいる作品などもたくさんある」 佐倉さんは、アニメの表現にはフェミニズムの観点から見ても性差を越えるような画期的な視点が含まれることが多く、「萌えキャラ」や「オタク文化」のすべてを女性蔑視だとして全面的に否定する極端な批判はこうした点を見過ごしてしまう恐れがあるとして警鐘を鳴らす。
「萌えおこし」、注意すべきことは
では、行政などがアニメとコラボしたり、「萌えキャラ」でまちおこしをしたいと思ったとき、どのようなことに注意をすればよいのだろうか。佐倉さんは今回のような騒動を避けるためには、現場スタッフが「どのように批判される可能性があるか、十分事前にシミュレーションすること」だと提案する。今回の「のうりん」のキャラについても、反発が出にくそうなビジュアルを用いることは出来たはずで、ビジュアルの選択に注意しさえすれば問題とはならないと考えるからだ。