【高校サッカー】金沢学院大付がPK戦制す GK石山アレックスが止めた「3年生引退させない」
<全国高校サッカー選手権:金沢学院大付0(4PK3)0鹿児島城西>◇29日◇1回戦◇U等々力 元日の能登半島地震から約1年。初出場の金沢学院大付(石川)が、鹿児島城西戦で0-0からのPK戦を4-3で制し、被災地に勝利の吉報を届けた。4人目でPKを外したDF山下聖真主将(3年)から、キャプテンマークを託されたGK石山アレックス(2年)が直後に相手4人目をストップ。逆境に耐えて固い絆をつなぎ、乗り越える姿をピッチでも体現した。31日の2回戦では、開幕戦を制した帝京(東京B)と対戦する。 ◇ ◇ ◇ 「がんばろう石川」。金沢学院大付GK石山が、スタンドに掲げられた横断幕と、大声援に背中を押された。劣勢のPK戦4人目。右に跳んだが懸命に足を伸ばし、相手のシュートをかろうじて止めた。「自分がやってやる。勝たせる。3年生を引退させない気持ちでやりました」。直前に外した山下から「ごめん、頼んだ」と涙を流して託された黄色い主将マークを左腕に巻き、ほえた。5人目は「これも止めて自分も注目されたい。夢はプロ」。気持ちを強く持った結果はクロスバーが助けてくれた。 前日は「聖地国立」で入場行進したが「自分にとって聖地は等々力です」。中学時代に川崎FのUー15でプレー。中2の秋に背中を痛め、U-18には上がれなかったが、当時の仲間や家族らが駆けつけてくれた。PK中も「アレックス~」の声援。「自分のホームなんだと。スタジアムからも力をもらった」。GKなのに大好きなC・ロナルドのポーズで喜びを表現した。 現在の“ホーム”は石川県だ。富山第一に進学も環境が合わず、金沢学院大付で1年後に1年生からやり直した。一時はサッカーをやめようとしたことも。揺れる心を救ってくれたのが石川の仲間だった。友との大好きなサウナも「15分、入るんですけど残り2、3分はかなりつらい。耐えることでメンタル鍛えられる」と鍛錬につなげている。 今年の元日、午後4時10分。自身は川崎市内の神社で初詣中だった。「金沢は被災していないかと思っていたら、意外に酷くて…。言葉がなかった」。支えてくれた仲間のため、家族のため、被災地のため。「勇気を届けたい。まだまだこれから」。守護神の恩返しが始まった。【鎌田直秀】 ◆石山アレックス(いしやま・あれっくす)2007年(平19)3月6日生まれ、東京・品川区出身。清水台小1年時に清水台キッカーズで競技を開始。小4からGK。あざみ野FCやFCパーシモンでもプレー。川崎・有馬中では川崎FのU-15所属。好きなサッカー選手はクリスティアーノ・ロナウド。家族はフランス系カナダ人の父と日本人の母。趣味はサウナ、温泉。183センチ、78キロ。血液型A。 ○…J2群馬のGKだった北監督は、選手たちにリベンジを託した。2回戦の帝京戦へ「実は僕、星稜時代に帝京に選手権で負けていて。この因縁を。2年生に田中達也選手がいましたね」。99年度の3回戦で0-2と敗れた雪辱も期す。また、自身も金沢市出身だけに「まだテレビの実情と現状はかけ離れているとは聞いているので、サッカーをやっている子供たちが石川県代表のチームでもやれるということを見て力に変えてほしい」と意気込んだ。