「イプシロンS」ロケットの2回目の試験でまた爆発–JAXA「前回の対策が十分かを含めて原因を究明」
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、開発する小型の固体燃料ロケット「イプシロンS」の第2段モーター再地上燃焼試験を11月26日に実施。試験中に爆発が起き、火災が発生した。同日午後4時30分からJAXAは記者会見を開催した。 イプシロンSは小型化する衛星の打ち上げ需要に対応するため、2020年3月から開発を開始。2024年度内の実証機打ち上げを目指している。今回の試験は、能代ロケット実験場(秋田県能代市)で2023年7月に実施した第2段モーター地上燃焼試験に起きた爆発事故に対策を講じた再挑戦が目的。 能代での爆発事故は、固体ロケットを点火させるための火種になる「イグブースター」と呼ばれる装置が溶融してしまったことが原因と判断して対策を講じて、今回の再地上燃焼試験の実施となった。 今回の爆発が起きた原因について担当者は200以上にデータを確認する作業を進めると説明。原因の可能性の一つとして、燃焼圧力を挙げた。 着火開始してから20秒後に、予測していたよりも燃焼圧力が高くなり、予測していた燃焼圧力と実際に計測した燃焼圧力の乖離が徐々に大きくなり、着火開始49秒後に爆発となった。 対策を講じた第2段モーターは、燃焼圧力が10メガパスカル(MPa)に耐えられることを確認。今回の再地上燃焼試験では、ケースが8.8MPaに耐えられることを確認。この8.8Mpaは、実際に打ち上げるときの燃焼圧力である8MPaを踏まえて決められた数値だ。 しかし、燃焼圧力が7MPaの時点で爆発が起きたことを明らかにしている。燃焼圧力が許容している範囲で爆発となった原因は不明だ。 爆発事故で試験場設備はかなりの被害が見て取れるとし、復旧には最低でも数カ月はかかるとの見立てを明らかにした。イプシロンS実証機の打ち上げは2024年度内を目指していたが、担当者は「(年度内は)厳しい」との見方も明らかにした。 前回の爆発事故の原因を究明し、対策を講じての今回の再地上燃焼試験となり、また爆発となってしまった。今回の爆発の原因究明はこれから進むことになるが、担当者は「前回の対策が十分だったかを含めて原因を追及する」と説明している。
田中好伸(編集部)