メジャーリーグ “低レベル”な本塁打タイトル争いの背景
■32年ぶりの40本塁打到達なしの可能性も メジャーリーグはプレーオフ進出を巡っていよいよ、シーズンの佳境に入ってきたが、ファンを失望させる記録が更新されようとしている。アメリカン・リーグ、ナショナル・リーグ共に本塁打タイトル争いのレベルが低下。アリーグの本塁打タイトル争いトップに立つオリオールズのクルーズが9月15日現在、39本で、40本にかろうじて王手をかけているが、ナリーグにいたっては、トップのスタントン(マリーンズ)は37本で、3位のデューダ(メッツ)はわずか27本だ。このまま誰も40発を打たずして、シーズンが終わるようなことになれば、1982年以来32年ぶりのことになるし、タイトルホルダーが40台前半で終わっても92年以来の出来事となる。なぜ、今季、メジャーの本塁打数が減少しているのか。 ■本塁打減少の背景には薬物疑惑も そのヒントとなるようなショッキングなニュースが先日、飛び込んで来た。アリーグの東地区1位を走るオリオールズのクリス・デービス内野手(28)が薬物テストで興奮剤のアンフェタミンに陽性反応を示し、ポストシーズンにも及ぶ25試合の出場停止処分を受けた。本人はその日のうちに誤って使用したことを認め、球団関係者やファンに謝罪の声明を出して処分を受け入れた。昨年は56本塁打、138打点を放った二冠王は、今年になって26本塁打、72打点と大きく成績が降下。打率.196と低迷していた。 今季、従来の成績から大きく数字が落ちているのは、デービスだけではない。バチスタ(ブルージャイズ)が32本、昨季44本のカブレラ(タイガーズ)が半分の22本と、本塁打争いの常連が、軒並み低調で全体の本塁打量産ペースが落ちている。レッドソックスのファレル監督は言う。「大リーグ機構が近年、薬物違反のポリシーを強化し、球界全体で薬物使用の撲滅に取り組んでいることとの因果関係の考察は、論議に値することだろう」。 少し回りくどい言い方で薬物使用の関係を示唆したのは、はっきり断定すれば、薬物疑惑が殿堂入りの論争になっているバリー・ボンズを始め、多くの方面に及ぼす影響を配慮してのことだろう。