「マニュアルを読んでおいて」 これだけでは教えたことになりません
突然ですが、新しく職場に入ってきた人が困ることって何だと思いますか。 覚えることが多い、今までとやり方が違う、専門用語についていけない、職場にいる人の顔と名前が一致しないなどあるでしょう。その中でも新人が一番困るのは、「することがない」という状態です。仕事ができないので、何か教えてもらわないと、あるいは彼らのレベルでもできる仕事を与えてもらわないと、何もすることがなくなってしまいます。 【画像】これは役に立つ! 新人向けの「仕事マップ」 私たち教える側も忙しいですから、新人ばかりにかまっていられません。かといって、新人に何も指導しないというわけにもいきません。そこで、つい「マニュアルを読んでおいて」と放置状態にしてしまうことがあるのです。指導者にそう指示された新人は、言われた通り机に向かってマニュアルを読みはじめます。いえ、正しい言い方をすれば、マニュアルを広げて眺めはじめます。 本人の気持ちとしては、「自分だけ仕事ができずに申し訳ない」「周りの人に悪い」と思いながらも、できることがないので、申し訳なさと焦りで頭がいっぱいになってしまいます。こんな心理状態で、マニュアルの内容が頭に入ってくるわけがありません。マニュアルのページをなんとなくめくるだけで、手持ち無沙汰な状態が続きます。 ある新人は、「やることがないので、仕方ないからメールを見ているふりをしたり、オフィスのゴミや書類を片付けるふりをしていました。エクセル入力でも何でもいいから、仕事をもらえたらありがたかったです」ということを話していました。 こういう手持ち無沙汰な状態では、いつまでたっても職場になじむことができません。何もすることがなければ、その場に「参加」することはできないからです。新人が職場に参加し、適応するためには「役割の認識」が必要になります。 「役割の認識」とは、自分が職場に来て何をすればいいのか、いちいち言われなくても分かっているという状態であり、こういう状態を作れるよう手助けすることが、私たち教える側には求められます。 最初の段階は「今日は、昨日受注した商品の受注処理を午前中までにやっておいて。それが終わったら、次の仕事をお願いするからまた聞きに来て」と、細かく指示しなければいけないでしょうが、いずれは「今日は、午前中に昨日の受注処理を、午後には新商品のPR用の資料作成をやっておきます」と自分から言ってくるようにしていきたいものです。 そこでおすすめしたいのが、「仕事マップ」を描いてみることです。「仕事マップ」とは、新人が関わるであろう仕事の全体像のことです。 この全体像をもとに、「1年かけて、ここに書かれているすべての仕事ができるようになってもらうから」と説明した上で、「最初の1カ月間は、この営業活動のアポ取りができるように、一緒に進めていこうか」といった形で、指導していくことができます。 この全体像があることで、今自分がやらなければならないことが何なのか明確になり、新人が自分の「役割の認識」をしやすくなるのです。 また、全体像が見えることによって、新人が抱える不安も解消できるようになります。覚えなければならないことがたくさんあると、何をどこまで覚えれば終わるのか、不安になってしまう新人もいます。仕事マップで全体像が把握できれば、これからどんな仕事を身につけるのか分かって安心しますし、今後どんなことを学んでいくのか事前に知れて、心の準備をすることもできます。 一度作ってしまえば流用もできますので、新人のために仕事マップを作成してみてください。 仕事マップがある場合 Good!: 最初の1カ月は、アポ取りができるようになればいいって言っていたから、アポが取れるようになったら、訪問した時の営業トークの練習とか、資料作成や準備の仕方を覚えていくんだろうな。 Good!: セミナーや説明会の準備も手伝えるようになってほしいって言ってたけど、それは半年後らしいし、とりあえずアポ取りに集中しよう。 仕事マップがない場合 Bad!: とりあえず、営業電話をしてアポが取れるようになってって言われたけど、アポが取れるようになったら、そのあとどうするんだろう? Bad!: ゆくゆくはセミナーや説明会の手伝いもしてもらいたいって言ってたけど、それっていつからやるんだろう。分からないことだらけで不安になる……。 (関根雅泰)
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