ザックJの9月は新旧崖っ縁マッチ
豊田を落とした理由
ザックジャパンにおける9月の2試合は「新旧サバイバルマッチ」というより、「新旧崖っ縁マッチ」の様相である。日本サッカー協会は29日、グアテマラ代表(9月6日@長居スタジアム)、ガーナ代表(同10日@日産スタジアム)との国際親善試合に臨む日本代表メンバー23人を発表。先のウルグアイ代表戦のメンバーからDF駒野友一(ジュビロ磐田)、MF高橋秀人(FC東京)、FW豊田陽平(サガン鳥栖)の3人が外れ、DF酒井宏樹(ハノーファー)、東アジアカップ組のFW齋藤学(横浜F・マリノス)とFW大迫勇也(鹿島アントラーズ)の3人が復帰を果たした。 [表]2013年の試合成績 中でも意外だったのが、豊田の落選だった。 東アジアカップにおけるポストプレーとゴール前へ入っていく迫力を、アルベルト・ザッケローニ監督は「味方のためにスペースを作り、味方がゴールする可能性を生み、自らもゴールする可能性を感じさせた」と珍しく個人名を挙げながら絶賛。ウルグアイ戦でも後半19分から投入し、MF本田圭佑(CSKAモスクワ)やFW香川真司(マンチェスター・ユナイテッド)らの常連組との融合を図らせた。 しかし、結果はシュート0本。ゴール前で一度ニアサイドに入ってから、ファーサイドへハイスピードで逃げていく得意の動きで相手のマークを外しても、残念ながらクロスが入ってくることはなかった。試合後には「自分のプレーをまったく分かってくれなかった」と、うなだれるしかなかった。 対照的にウルグアイ戦でワントップとして先発したFW柿谷曜一朗(セレッソ大阪)は、常に裏のスペースを狙うことで相手の最終ラインを下げさせ、本田をはじめとする味方の選手が入り込むスペースを作り出した。右サイドのFW岡崎慎司(マインツ)とは、息の合ったコンビネーションも見せた。 決定的なチャンスこそ訪れなかったが、これまでワントップを務めてきたFW前田遼一(ジュビロ磐田)やFWハーフナー・マイク(フィテッセ)とは、まったく異なる動きで前線に「化学変化」を生じさせた。再び試したい、とザッケローニ監督に思わせるのに十分だったと言っていい。 つまり、ウルグアイ戦までの2日間の準備期間の中で柿谷は融合への自己アピールに成功し、豊田は失敗したことになる。 FWにはゴールという絶対的な指標がある。得点王を獲得した東アジアカップにおける輝きを、9月の2連戦で本田や香川らと共存するピッチで再び放つことができれば、ザックジャパンにおける柿谷の居場所はより確実なものになる。 一方で豊田に再度のチャンスを与えるよりも、豊田と同様にポストプレーを得意とし、J1で自身初となる2ケタ得点を達成して波に乗っている大迫の可能性を見てみたい。非情にも映るザッケローニ監督の決断は、むしろ自然な流れと言える。