コロナ禍でも右肩上がりの外国籍町民。約50カ国から人が集まる神奈川県央部の「異国」愛川町
さらなる相互理解に向けた取り組み
愛川町ももちろん教育の現場で、スペイン語やポルトガル語、タガログ語など、それぞれの言語を訳す日本語指導協力者を手配し、週に2~3日ほど授業のサポートを行うなど言語教育には力を入れてきた。 それでも、読み書きの水準、さらには進学のための習得という点を考えると、十分な人員が確保されているとは言い難い。これは外国籍住民を抱える自治体共通の、多文化共生がキーワードに挙げられる昨今では国を挙げて取り組むべき課題かもしれない。 その点でいえば愛川町は2019年7月から、興味深い取り組みをはじめた。
様々な国の食文化に触れながら学ぶ、各国の料理を献立にした月に一度の「オリパラ給食」だ。 初回はクルーリ(ごまを使ったパン)やムサカ(ナスとひき肉のグラタン)などオリンピック発祥の地、ギリシャのメニューではじまり、以後、ブラジル、ペルー、ベトナム、韓国、インド、etc……。世界各地を給食で巡った。 「おいしいし楽しい」 「(オリンピックが終わっても)ずっとやってほしい」 「次はイギリスの食事を食べてみたい」 児童からの評判も上々だった。
栄養士の土屋香織先生は「そのたびに試作して、給食に出せる献立になるか、子どもたちの舌に合うか、確認するのはたいへんですけれど」と苦笑いするが、「クラスメートのルーツを知り、普段、過ごしていると出合わない食材を口にする機会にもなる。味覚を育てるという意味でも生きた教材になっていると考えています」と手応えを語る。 東京2020の閉幕と同時にこの企画は終了したが、今後も愛川町は、町ならではの食育の方法を探っていく方針だ。
今年12月現在で、愛川町民のワクチン接種率は85%を超えている。もちろん外国籍住民も含めた数字である。 町役場に支援金の手続きで寄ったペルー人のオオタフアナさんは言う。 「(ワクチンに対する)不安はなかったよ。町が助けてくれようとしているのは本当にありがとうと言いたいですね。フェスティバルが中止になっちゃったのは残念だけど、また来年」 フェスティバルとは、国際交流屋台村が出店し、サンバカーニバルなどもある毎年夏の「勤労祭野外フェスティバル」のことだ。