考察『光る君へ』31話 一条帝(塩野瑛久)の心を射貫くのだ! まひろ(吉高由里子)の頭上から物語が美しく降り注ぐ歴史的瞬間。しかし道長(柄本佑)は困惑気味
姉上は、根が暗くてうっとうしい
まひろと惟規(高杉真宙)、姉と弟の場面はいつもよい。 酒とツマミを口にしながらの 「惟規の自分らしさってなんだと思う? 私らしさってなに?」 惟規が自分で言うようにお気楽で、姉に対して遠慮がないところが、今回の作家として自分を客観視しようというまひろにプラスに働いた。 根が暗くてうっとうしい。 怒りよりも、それだ! となるところが創作欲に支配された作家の証。根が暗くてうっとうしい、そこを活かし物語設定と登場人物を掘り下げて書く……。 まあでも、あれです。『源氏物語』ファンとしては確かにあの作品、明るい性格の人が書いたとは思ってません。そこがいいんです。
すごいな、この家
中宮様に献上する作品を書くので、それにふさわしい紙をお願いしますとまひろから連絡を受けて、権力と財力にものを言わせて最高級の越前和紙を大量に……しかも自ら持ってきちゃう左大臣様よ。 「越前には美しい紙がある。私もいつか歌や物語を書いてみたいと申したであろう。宋の言葉で」 レビュー27回で「ハイ、ここテストに出まーす覚えててくださーい」「道長はきっと決して忘れない」と書いたが、本当に彼はそっくりそのまま覚えていた。 「俺の願いを初めて聞いてくれたな」 左大臣様? みんな聞いてますよ? 従者、家人たちだけでなく、娘・賢子(福元愛悠)も聞いてますよ? 恥ずかしいなあ、もう。 ただ、いつも夜更けに六条の廃屋で人目を忍んで抱き合っていたふたりが、明るい日の光の中で皆に囲まれている姿に胸がいっぱいになる。 「左大臣様が来るのか?すごいな、この家」と驚く福丸(勢登健雄)に「すごいのよ」と誇らしげに、しかし公にはならないふたりの関係を思い、少し苦い表情を含むいと──信川清順の芝居がよい。 下書きをしたのちに、清書用の越前和紙を手に取ったまひろがなんともいえず嬉しそうだ。いよいよ『源氏物語』か!? と思ったが、文面を読んでみると、あれ。違う。あれれ。