【対談】永吉佑也×ベンドラメ礼生「“ホーバスジャパン”経験者が語るパリ五輪日本代表。選手の素顔や意外な一面も」
◾️ベンドラメが前回大会の八村を明かす「自転車で選手村を1周するのが彼の日課」
――最年長の比江島選手。永吉選手は同じ青山学院大学出身で、1学年下の後輩にあたります。 永吉 僕は招集されず、同級生の張本(天傑/名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)選手も選考から外れたのに、比江島選手はまだトップレベルで頑張っている。この世代では最後の1人で、本当にすごいですよね。シュート成功率が上がっているし、 パフォーマンスも高まっている。一緒にプレーしたからこそ、まだ成長するのかいう驚きがあります。次のロサンゼルスオリンピックまで続けられるんじゃないのかなと。日本代表活動に参加した2年前の夏、当時も年齢が一番上だったので、2人でバスの最後列に座りました。30歳を超えても僕の隣に比江島選手がいて、比江島選手の隣に僕がいる。すごくしみじみしましたね。まだ頑張っているなって。 ベンドラメ プレー面ではちょっとリズムが違います。世界でも対応するのが難しいから、あれだけドライブできて、得点を取れると思います。真似しようとしてできるものではないですよ。だからこそ今でも活躍できているのかなと。オフコートのエピソードは特にないな(笑)。なんかありそうですけど。 永吉 あんなに後輩たちからイジられるキャラなんだなって。 ベンドラメ めちゃくちゃイジられますよね。 永吉 いい意味でイジられている。大学の先輩後輩ですが、宇都宮に鵤誠司選手がいるじゃないですか。比江島選手が4年生の時、鵤選手が1年生。同じ福岡県出身ということもあって、彼を成長させてきたと勝手に思っています。 ベンドラメ 1年生の時から「マコ」って呼んでいましたよね。でも怒る比江島選手を見たことがない。 永吉 そうそう。 ――テーブス海(アルバルク東京)選手についてはいかがでしょうか? 永吉 僕は2年前の日本代表で一緒にプレーしました。当時のことを考えたら、ジェイコブス選手を除いて一番のサプライズ選出だと思います。日本代表のバスケを勉強して、シーズン中は滋賀レイクスとアルバルク東京で自分なりのポイントガード像を作り上げたなと。日本代表に懸ける思いが強く、しっかりと結果を残したのはすごいです。彼は3ポイントの成功率があまり高くなく、ピック&ロールのディフェンスではアンダーを抑えられがちでした。シューティングなどやらなければいけないことに取り組んだ結果、今のテーブス選手があるのかなと。所属チームでも日本代表のことを常に意識していたはずです。 ベンドラメ 彼が選出されたことで、2ガードの戦術が加わりました。2ガードでうまくいった試合もありましたよね。彼はドライブからキックアウトのパスを出す力も持っています。海外でプレー経験があり、フィジカルや戦い方を理解しているはずです。サイズで世界と対抗するのなら、テーブス選手がいると安定するのかなと。アウトサイドシュートに関してはこの1年間で克服してきたし、それを補うだけのフィジカル、パス、ドライブセンスがあります。彼が試合に出たら、チームとしてプレースタイルをガラッと変えることもあると思います。 ――八村選手が3年ぶりに日本代表へ復帰しました。 永吉 皆さんもわかっていると思いますが、間違いなくホーバスHCのバスケにフィットします。楽しみしかないですね。復帰後、日本代表のユニフォームを着て、試合に出場する姿をまだ見られていません。渡邊選手や比江島選手など前回大会に一緒に出場した選手もいるので、馴染んだ状態でオリンピックに出場することを期待しています。 ベンドラメ 前回大会の話ですが、選手村はすごく広く、徒歩での移動では時間が掛かるので、僕は自転車を購入して持ち込んだんですよ。富樫選手とリラックスしていた時、毎晩のように八村選手が来て「自転車を貸してください」と。自転車で選手村を1周するのが彼の日課で、すごく楽しんでいました。 ――渡邊雄太選手の活躍も期待されます。 永吉 彼が高校生の時、初めて日本代表で一緒にプレーしました。高校卒業後はアメリカへ渡り、成長を続けていきました。2016年にジョージ・ワシントン大学が来日した際に対戦しましたが、昨年夏の日本代表活動で久しぶりに再会して話しました。人間的に変わっていませんでしたね。NBAルールがあって、日本代表での活動が限られるなか、こんなにやるのかというほどトレーニングに励んでいました。意識の高さに驚き、自分が感銘を受けました。 ベンドラメ 日本代表の精神的柱ですよね。彼の闘志が日本代表に勢いを与えると思っています。ケガから復帰して、必ず出場してくれるのかなと。辛いと思いますけど、ケガを乗り越えるだけの強さを持っています。彼がいないとチームも勢いづきませんから、個性豊かなチームを引っ張ってほしいです。 ――次は馬場雄大選手です。 永吉 Gリーグやオーストラリアでのプレーを経て、人が変わったかなと感じるほど人間的にすごく成長しました。それがプレーにも現れているのかなと。彼はとにかくストイックで、自分に厳しくすることが楽しみなんじゃないかと思うほどです。どう説明したらいいのか……言いたいことわかる? ベンドラメ 聖人というか。悟りを開いたかのように変わったんです。 永吉 プライベートな部分では自分の時間を大切にしているというか。合宿時、よく一緒にサウナに入るんですよ。彼と須田(侑太郎/シーホース三河)選手の整い方は、ほかのアスリートとは違います。こだわりが強いです。サウナから出て、水風呂に入って瞑想するような感覚。その時の姿勢が聖人みたいで、見てはいけないぐらいです。 ベンドラメ 馬場選手はボールがないところで活躍できる選手だと思います。ボールを持って、ピック&ロールから得点を取るのではなく、ディフェンスからトランジションを仕掛けたり、相手の隙を見てバックカットしたり。20得点をコンスタントに取る選手というより、相手にダメージを与える10得点を取れる選手だと思っています。海外挑戦を掲げ、スタッツを残さなければいけない意識があると思いますけど、ワールドカップでチームとして多くの3ポイントシュートを打てたのも、馬場選手のディフェンスがあったからです。あとはオフボールの動き。ボールを持つ前の勝負で、一歩前に出られる選手です。ホーバスHCのバスケでは3ポイントシュートを打つチャンスがあれば打つ。そういった意味では彼の考えがシンプルになっていると思います。ボールを持つ前に仕掛ければ、世界で活躍できる選手だと思っているので、そこに期待したいです。あとは「泣かないで頑張れ」と言いたいです。 永吉 ハハハ(笑)。 ベンドラメ あんなに泣く姿は初めて見ました。自分を追い込んで、ストイックに取り組んできたからこその強い思いもあるはずです。彼が感情を爆発させて泣く姿を見た時は、僕も感動して、もらい泣きしちゃいました。すごくうれしかったです。