「首つりのあった部屋」に住む男性、謎の音はするけど「気にしない」 “事故物件”はアリかナシか
「ただ、うちに泊まりにきた友人のほぼ全員が、『天井から音が聞こえる』と言うんです。まぁ確かに言われてみれば上のほうから、昼夜問わずタップダンスを踊っているような音が聞こえてくる感じはします。他の部屋の音が響いて上から聞こえているのだと思っています」 ■事故物件、何が嫌なのかわからない 「人が亡くなった不動産に対する嫌悪感が減り、気にしない人が増えてきた気がします」 こう話すのは、事故物件の買い取りや販売業だけでなく、不動産の再生を目的としたリノベーションも行うマークスライフ株式会社の花原浩二さんだ。 自死、他殺、孤独死などの「ワケあり物件」を買い取り、必要に応じた清掃を行い、付加価値をつけた施工で販売をする「成仏不動産」を運営している。 「月数回講演に出ていますが、その場でいつも質問をしています。『事故物件を気にしない方、いらっしゃいますか?』と。すると大体毎回2割の方は挙手されます。学生でも同じぐらい。時には4~5割ほどの方が該当することもあります。聞くと『まったく気にならない』と言う」 花原さんはこう話す。 「事故物件への歪んだ偏見がある人の視点からすれば、驚きなのかもしれませんが、『なぜ嫌なのかがわからない』という人は、一定数いらっしゃいます」 こうした人にとって事故物件とは、<魅力的な物件>だ。 マークスライフは、事故物件所有者からの相談を受け、可能な限り高額で買い取り、必要な人に向けて販売をしている。 花原さんは言う。 「私の感覚では、事故物件について注目度が上がっている気がします。その背景には不動産価格の高騰があると思います。コロナ禍を経て、皆さんの住まいに対する考え方は変わりました。生活スタイルが変わり、広さを求めるようになってきた。この2、3年ほどは特に注目されている印象です」 どのぐらい価格が下がるのか。 花原さんによると、「エリアや物件価格帯によっても異なるが、孤独死があった物件で約1割、自死で2割、殺人事件で半額程度の割安」という。 「最近の傾向として、殺人事件があった物件に、民泊目的での購入希望が増えています。投資家の購入も増えてきたと感じます」 ■国のガイドラインは「気になったら聞いてください」 2021年10月、国土交通省が「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を公表した。事故物件を取り扱う不動産業者に向け、告知義務や判断基準を定めた。 「簡単に言えば、『売買は原則告知が必要。賃貸の場合は特例を除き瑕疵発生から3年間は、告知しましょう』という内容です。告げなくて良いとされた場合でも、事件性や周知性が特に高い事案は告げる必要があるとされています。このガイドラインができる前は、不動産業者によってまちまちで、10年経っても告知しているところもあれば、1人入居すれば告知義務がなくなるという勝手なルールも広がっていました」