「もう二度と関東には戻れず、地方を転々と」…一度歯向かえば”終わり”!? 日本の司法制度を蝕む「最高裁事務総局」中心体制
「裁判官」という言葉からどんなイメージを思い浮かべるだろうか? ごく普通の市民であれば、少し冷たいけれども公正、中立、誠実で、優秀な人々を想起し、またそのような裁判官によって行われる裁判についても、信頼できると考えているのではないだろうか。 【漫画】刑務官が明かす…死刑囚が執行時に「アイマスク」を着用する衝撃の理由 残念ながら、日本の裁判官、少なくともその多数派はそのような人々ではない。彼らの関心は、端的にいえば「事件処理」に尽きている。とにかく、早く、そつなく、事件を「処理」しさえすればそれでよい。庶民のどうでもいいような紛争などは淡々と処理するに越したことはなく、多少の冤罪事件など特に気にしない。それよりも権力や政治家、大企業等の意向に沿った秩序維持、社会防衛のほうが大切なのだ。 裁判官を33年間務め、多数の著書をもつ大学教授として法学の権威でもある瀬木氏が初めて社会に衝撃を与えた名著『絶望の裁判所』 (講談社現代新書)から、「民を愚かに保ち続け、支配し続ける」ことに固執する日本の裁判所の恐ろしい実態をお届けしていこう。 『絶望の裁判所』 連載第28回 『“腐敗”しきった「上層部絶対主義」の姿はほとんど「忠犬」!…「上におもねり、部下に強権を振るう」地裁所長の衝撃の姿』より続く
人事による統制とラットレース
最高裁長官、事務総長、そして、その意を受けた最高裁判所事務総局人事局は、人事を一手に握っていることにより、いくらでも裁判官の支配、統制を行うことが可能になっている。不本意な、そして、誰がみても「ああ、これは」と思うような人事を2つ、3つと重ねられてやめていった裁判官を、私は何人もみている。 これは若手裁判官に限ったことではない。裁判長たちについても、前記のとおり、事務総局が望ましいと考える方向と異なった判決や論文を書いた者など事務総局の気に入らない者については、所長になる時期を何年も遅らせ、後輩の後に赴任させることによって屈辱を噛み締めさせ、あるいは所長にすらしないといった形で、いたぶり、かつ、見せしめにすることが可能である。 さらに、地家裁の所長たちについてさえ、当局の気に入らない者については、本来なら次には東京高裁の裁判長になるのが当然である人を何年も地方の高裁の裁判長にとどめおくといった形でやはりいたぶり人事ができる。これは、本人にとってはかなりのダメージになる。プライドも傷付くし、単身赴任も長くなるからである。 日本を震撼させた衝撃の名著『絶望の裁判所』から10年。元エリート判事にして法学の権威として知られる瀬木比呂志氏の新作、『現代日本人の法意識』が刊行されます。 「同性婚は認められるべきか?」「共同親権は適切か?」「冤罪を生み続ける『人質司法』はこのままでよいのか?」「死刑制度は許されるのか?」「なぜ、日本の政治制度はこんなにもひどいままなのか?」「なぜ、日本は長期の停滞と混迷から抜け出せないのか?」 これら難問を解き明かす共通の「鍵」は、日本人が意識していない自らの「法意識」にあります。法と社会、理論と実務を知り尽くした瀬木氏が日本人の深層心理に迫ります。
【関連記事】
- 【つづきを読む】なぜ「出世に目がくらんだ裁判官」ばかりが増えるのか?…腐りきった“最高裁人事”の巧妙な「出世レースのカラクリ」
- 【前回の記事を読む】“腐敗”しきった「上層部絶対主義」の姿はほとんど「忠犬」!…「上におもねり、部下に強権を振るう」地裁所長の衝撃の姿
- 【はじめから読む】ベテラン裁判官「痴漢冤罪で無罪はほぼ出ない」…検察の主張を鵜呑みにする「裁判所のヤバすぎる内部事情」
- 日本の裁判所が「正義」よりも大事にしているもの…「靴ナメ」に等しい屈従さえも可能にする“ピラミッド型ヒエラルキー”の実態!
- 「自分が出世競争の奴隷であることが理解できていない」…日本と海外の裁判官を見比べると分かる「裁判官出世システム」の問題